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ハルシャミ保守 1日目 ハルシャミ保守 2日目(長門&みくる編) ハルシャミ保守 2日目(佐々木編) ハルシャミ保守 2日目(橘&周防編) ハルシャミ保守 2日目(谷口・ミヨキチ編) ハルシャミ保守 2日目(古泉編) ハルシャミ保守 3日目(ハルヒ&キョン編) ハルシャミ保守 3日目(おまけ)
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名前 アマテラス 種族 ソルロック 性別 ♀ マスター ハル うp主 季節の人 第3話で初登場したソルロック。ツクヨミの姉でもある。 化石目当てで山を荒らすR団を撃退する為、姉妹揃ってハルの仲間となった。 性格はお気楽であり太陽のごとく明るい。一人称は「あたし」であり、ハルを「マスター」と呼ぶ。 お月見山を救った後はオーキド博士の研究所で世話になっている。 だが、時折研究所を脱走しアキの手持ちに入り込んで登場するなど、 空気キャラにならぬよう日々努力(?)している模様。 また、オマケコーナーで妹と共にMCを勤めている。
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DMデッキ開発部NEXvol.32(このときはエーシックスとしてであり、ハルとしての登場はvol.33)にて、あまりにも闇文明の扱いが悪く、自然文明の贔屓が過ぎるということでヤギーから送られてきた新たな闇文明の担当。シュウと違って闇文明にこだわることはなく、「どっちでもいいですけど」とよく口にするアバウトな性格をしている。 NEX期はスカーフを頭に巻き、週刊!DASH以降は頭にゴッド・ノヴァのマークがついた三角帽子をかぶっているのが特徴である。また週刊!以降は常に糸目で、黒い長髪を後ろで結んでいる。服はノースリーブでハイネックの黒いインナーの上に薄紫色をしたショルダーカットのワンピースを着込み、ちょうど肩だけ露出する構造になっている。身長は比較的高いほうらしいが、それでもシュウには届かないらしい。 スーパーデッキとゴッドが好きであり、食べ物ならエビも好きである。一方でカニの話は嫌がる他、甘いものはそんなに好きではないと話したことも。 年齢については、アンよりも年上であることだけが判明している。このことから、デッキ開発部メンバーの中ではエーツーとシュウに次いで年齢が高いことがわかる。 「どっちでもいい」とすぐに言うような人物であるが、これでも、なんでもどっちでもいいというわけではなく、ハルにはどっちでもよくない7つの事柄が存在していることが週刊!DMデッキ開発部DASHにて明らかになった。このポイントを刺激してしまうとハルが拘りだすため、話が脱線したり進まなくなったりする。 現在、明らかになっている「どっちでもよくない」ことは『シュウさんに負けないデッキを作れるようになること』(NEXで判明)、『人が怒ること』、『時間』、『話し始めたら、最期まで話したい』、『幸せでハッピーなこと』、『エビについて』、『殿堂入り』である。また、美容にも結構気を遣う。 DMデッキ開発部NEX最終回にて、人気投票で2位になったことが判明し、1位のシュウとともにルール解説部に異動する。その後、ルール解説部をしていたシュウとトモは約1年後にDMデッキ開発部に帰ってきたが、ハルは復帰しないまま、どのような状況になっているのか長い期間不明なままであった。ちなみにこの期間にアンはハルと普通に交友していたらしく、エ―ツーはDASH特選カードvol.34にてそのことを聞き、驚いていた。 週刊!DMデッキ開発部DASHのエピソード3期にて、ゴッドがゴッド・ノヴァとして復活したのに合わせまさかの復活を果たす。NEX期のセルフオマージュなのか、週刊!DASHVol.55にてエーツーに変装して登場した後、同Vol.56にて正体を現した。Vol.56では旧アイコンの拡大であったが、Vol.57以降は新アイコンを得たため顔や服装がはっきりわかるようになり、その奇抜なファッションに驚いた人は多いであろう。名目上はDMデッキ開発部自体に戻ってきたわけではなく、アンが作った新チームのメンバーとしての復帰である。背景が黒ではなく薄紫色になるなど闇文明担当とは別枠扱いになっているが、その後も闇文明担当の頭数に数えられることはある。 シュウに「闇文明の貴公子」と呼ばれていたことなどから男の子であると考えられていたが、週刊!DMデッキ開発部DASHに再登場し始めてからは、服装、言動、周りの反応から、実は女の子なのではないかという噂が読者の間で発生し始めている。真相は定かではない。そのためか、ケンジからは「ハルくんちゃんさん」と男女両方の敬称を付けた呼ばれ方をされ、初めて開発部内で直接呼ばれた同Vol.91では些か面食らっていた。 DMデッキ開発部NEXの頃は特にクールな性格であり、美学やスベリ芸でおなじみのシュウに関して「闇文明はそういうものじゃない」「僕とシュウさんはまったく助け合わない」と発言するなど、スタンスの違いから互いにやや距離を置いていた。しかし、話が進むにすれ仲が良くなっていき、2人で組む場面も多くなった。死神をテーマにデッキを組んだ際には、シュウとハルでまったく同じ構築になったことも。 XX期に連載されたルール解説部の頃には、日常的にシュウとデュエマしているらしき言及も見られるようになり、その仲の良さが伺える。シュウが自分たちだけ覚醒できないことに不満を持っていた際は「僕らもともと裏表みたいなもんなんでいいじゃないですか」となだめている。 週刊!DMデッキ開発部DASH以降はクールだった性格にメリハリができ、少し硬さのあった初期よりも他のメンバーに対してかなり積極的に関わるようになっている。また、シュウに対しての感情の振れ幅が大きくなっている。アンにもよく絡むことがあり、アンに対していちゃもんをつけたり、イケメンの幼なじみがいる設定を押し付けたり、非常に危険なパロディネタを振ったりとアンをかなりいじっている。 以前とは印象がかなり異なって見えるが、主任Kによれば性格はNEX後期の頃からぶれていないとのことで、ハル自身の性格を突き詰めた結果このような描写になったようだ。 ■デッキ開発部のプロテクト化するメンバーを決める人気投票では5位にランクインした。僅差であったために4位のユウヤ、6位のリリィと共にプロテクト化した。約2年間出番がなかった状態で復帰して取った順位としては驚異である。 ■再登場時にキャラアイコンができたことで公式のキャラ紹介のページに新しくハルの記事ができた。ちなみに更新された当初、背景のハルが目が開いてる状態だったが、修正された。 ・この紹介文は他のメンバーのそれに比してかなりハイテンションになっているが、本来なら他のメンバーもこれと同じようなものに作り直されるはずだったらしい。実際には週刊!DASH開始時のE2期に作られたものが最期までそのまま使用された。→エピソード3期における二つ名の没案 ■デッキ構築の際には、ゴッドやシュウ関連を除けば基本的にデッキパワーを最重視しており、使うカードもデッキ同士で似通っている。本人曰く、自分のデッキ構築の方法をノートにつけてあるらしい。 ・好きな構築スタイルは1つのデッキに2つの勝ち筋を仕込む「どっちでもいい戦法」。この戦法のメリットは、両方を同時に行うことで、相手を「どっち対処してもダメ」な状態に追い込めることである。 ■主任KのTwitterにて兄弟などはいない一人っ子であることが判明した。ちなみにDMデッキ開発部メンバーの中で一人っ子であるのは、現在、ハルと八重子のみである。 ・一方で、年の近い姉がいるとの言及も過去にはあった。 ■SAGAVol.06以降、アンにやたらとイケメンの幼なじみがいる設定を押し付けようとしているのは、アンがシュウのことを好きではないかと疑っているため。実際、主任Kによれば恋愛感情かどうかは分からないにしろアンはシュウが一番好きであり、ああいう人がタイプではあるらしい。因みに、アンの幼なじみ自体は存在し、前評判通りのイケメンであった。 ■プレイス特別編では、自身の発言をアンが「カプレーゼ」とまとめたのを曲解し、暗に自分とシュウがカップルであると宣言したり、「初めての共同作業」という言葉を使ったりと、以前にもましてシュウへのアプローチが過激に。一方で、光担当と闇担当の対立構造を煽るだけ煽り、シュウが否定するとあっさり意見を覆すなど、キャラが安定しない様子も見られる。 ■ヒーローズ・カードはSR100%パックの《悪魔神グレイトフル・デッド》、超ブラック・ボックス・パックの《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》の2種存在している。また、どちらもシュウと一緒のイラストになっている。 ■名前の由来はMtGプロプレイヤーの齋藤友晴氏。本人はハルではなく「トモハッピー」名義で活動をしている。 DMデッキ開発部DASH ゴッドあるところにハルくんあり! オラクル教団は、ゴッド・ノヴァと一緒にこいつを復活させた! 常に返事は「どっちでもいいです」 でも、それは自分に揺るぎない自信があるからこその答え! 人呼んで『どっちも不一致(フィッチ・デモンストレーション)』のハルくん! 好きな切り札はもちろん、ゴッド・ノヴァ!自由自在の新ゴッド・リンクを自由自在に使いこなす! アンちゃんとは別の角度でフリーダム、開発部を飛び出した二人の活躍から目が離せないぞ!
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~部室にて~ ガチャ 鶴屋「やぁ!みんな!」 キョン「どうも」 みくる「鶴屋さんどうしたんですかぁ?」 鶴屋「今日はちょっとハルにゃんに話があるっさ!」 みくる(あぁ、あのことかぁ) ハルヒ「え?あたし」 鶴屋「そっさ!」 ハルヒ「?」 鶴屋「明日、ハルにゃんと長門ちゃん、みくるとあたしで遊び行くよ!」 ハルヒ「でも明日は団活が」 鶴屋「名誉顧問の権限を行使させてもらうよ!」 ハルヒ「えっと……有希はいいの?」 長門「構わない」 ハルヒ「みくるちゃんは?」 みくる「わたしは鶴屋さんから、事前に言われてましたからぁ」 ハルヒ「古泉君とキョンは?」 古泉「つまり男性禁制ということですよね?僕は大丈夫ですよ」 キョン「あぁ、俺も問題ない」 鶴屋「ハルにゃんはどうなのさ?」 ハルヒ「う~ん、そうね。たまにはいいかも」 鶴屋「じゃあ決まりっさ!」 みくる「ふふふ」 長門「……」ペラ 鶴屋「さぁ、こっからは女の子同士の話し合いの時間だよ!男子諸君は出てった、出てった!」シッシッ 古泉「そういうことなら帰りますが、よろしいですか涼宮さん?」 ハルヒ「そうね。今日は鶴屋さんに免じて二人とも帰っていいわよ」 キョン「じゃあそうさせてもらうぞ」 古泉「それでは、みなさん。また来週」 みくる「お気をつけて」 鶴屋「バイバ~イ」フリフリ ガチャ 鶴屋「さて、男子は追い払ったね。それで明日は何時頃なら大丈夫?」 ハルヒ「どっちにしろ朝から団活のつもりだったから、何時でも平気ね」 鶴屋「長門ちゃんは?」 長門「大丈夫」 鶴屋「みくるも大丈夫?」 みくる「はい」 鶴屋「じゃあ朝十時に駅前ね!」 ハルヒ「わかったわ」 鶴屋「それとさ、お弁当は持参だよ!」 みくる「近くにお店はないんですかぁ?」 鶴屋「ないことはないけど」 ハルヒ「別にいいんじゃない?」 鶴屋「さすがハルにゃん、話が分かるっさ!」 ハルヒ「どうせだから勝負しましょうよ?」 みくる「勝負ですかぁ?」 ハルヒ「そう料理対決!学年別のチーム戦よ!」 鶴屋「ってことは、あたしとみくる対ハルにゃんと長門ちゃんだね?」 ハルヒ「そうよ」 鶴屋「望むところっさ!ねっ、みくる!」 みくる「ふふふ。そういうことなら頑張っちゃいますよぉ」 ハルヒ「有希もそれでいいわよね?」 長門「いい」 ハルヒ「じゃあ今夜は有希のうちに泊まりいくわよ?」 長門「構わない」 鶴屋「それならあたしもみくるんとこ泊まりに行こっかなぁ」 みくる「わ、わたしの部屋はちょっと~」 鶴屋「いつになったら部屋片付けんの?」 みくる「そ、そういうわけじゃないですってばぁ~」 鶴屋「なら今夜はあたしんとこ来なよ!」 みくる「わかりましたぁ」 ハルヒ「それで、鶴屋さん。明日はどこ行くの?」 鶴屋「それは明日のお楽しみっさ!」 ハルヒ「団活休みにするくらいなんだから、楽しみにしてるわね!」 鶴屋「あんまりプレッシャーかけられると困るんだけどな~」 みくる「ふふふ」 長門「……」ペラ みくる「涼宮さん、今日はこの後どうしますかぁ?」 ハルヒ「そうね、あの二人帰しちゃったし……」 鶴屋「じゃあ解散でいいじゃん!あたしは明日のレシピをみくると相談せねばね」 ハルヒ「そうしましょっか」 みくる「それじゃあ、一度家に帰って着替えを取りに行きますねぇ」 鶴屋「あたしもついt」 みくる「鶴屋さんはおうちで待っててくださいね」 ハルヒ「みくるちゃん随分かたくなに拒否するわね……何かあるの?」 みくる「そ、そういうわけではないんですけどぉ……」 鶴屋「ハルにゃん、ハルにゃん、みくるはきっと部屋に男を飼ってるんだよ」ボソ ハルヒ「ウソ!?」 みくる「つ、鶴屋さ~ん、そんわけないじゃないですかぁ~」 ハルヒ「みくるちゃんがね~」 みくる「涼宮さんまで~」 鶴屋「あはは、それじゃ解散しよっか!」 長門「……」パタン ハルヒ「有希もきりがいいみたいだしね」 みくる「部屋に男の人なんかいませんからね?」 鶴屋「分かった分かった、ほら帰るよ!」 みくる「適当じゃないですかぁ」 ハルヒ「有希、あたしも家帰って、それから六時半くらいにはマンション行くわ」 長門「……」コク ハルヒ「それじゃあ鍵閉めるわよ?みくるちゃん早く」 みくる「は、はーい」トテトテ ガチャ ハルヒ「よしっと、それじゃ行きましょ」 鶴屋「はいよ~」 ~帰り道にて~ ハルヒ「さすがに夏ね。五時前だってのにこんなに明るい」 鶴屋「日が長くなると一日が無駄に長く感じるよ」 みくる「でも、お洗濯とか出来るし、いいことも多いですよ?」 ハルヒ「みくるちゃん主婦みたいね」 鶴屋「そりゃ仕方ないよ、ハルにゃん。家で主婦やってんだから」 みくる「まだ言うんですかぁ」 鶴屋「あっはっはっはっ!もう止めたげるよ」 みくる「もう!」 ハルヒ「話戻すけど、どうせなら夏が日が短く、冬が日が長く、この方がいいわよね」 長門「それでは生態系がおかしくなる」 ハルヒ「初めっからそうだったらそうゆう進化をするでしょ?」 長門「……」コク ハルヒ「別に、今から変われー!、ってわけじゃないわよ。あくまで希望よ、希望」 みくる(そ、それでも涼宮さんにそう希望されるのは) 長門(非常に困る) 鶴屋「でも、夏の日が長いおかげでいっぱい遊べるんだし、ハルにゃんとしては結果オーライじゃないのかい?」 ハルヒ「う~ん、それもそうね」 みくる「ほっ」 鶴屋「どしたの、みくる?」 みくる「な、なんでもないですよ」 鶴屋「?」 長門「……」トテトテ ハルヒ「それじゃこのへんで別れましょ」 鶴屋「そうだね、明日は覚悟していなよ、ハルにゃん?」 ハルヒ「例え鶴屋さんでもそうはいかないわよ」 みくる「それじゃあまた明日」 ハルヒ「ばいばい」 鶴屋「ばいば~い」フリフリ ハルヒ「それじゃあ有希。またあとでね」 長門「……」コク ~長門宅にて~ ピンポーン 長門「……」 ???「あたしよ」 長門「知らない」 ???「有希!」 長門「ジョーク。今開ける」 カチャ ハルヒ「毎回毎回よくも飽きないわね」 長門「反応がいい」 ハルヒ「余計なお世話よ。とりあえずあがるわね」 長門「どうぞ」 ハルヒ「お邪魔しま~す。おっ、前より小物が増えてきたわね」 長門「あなたが選んだものがほとんど」 ハルヒ「だって有希全然選ぼうとしないじゃない」 長門「そうでもない」 ハルヒ「そうだっけ?」 長門「そう」 ハルヒ「よっこいしょっと」バフ 長門「そこは私のベッド」 ハルヒ「知ってるわよ。なんか落ち着くのよね~」 長門「そう」 ハルヒ「なんでかしらね?このまま寝ちゃってもいい?」 長門「構わない」 ハルヒ「いいわけないでしょ、明日のお弁当のおかず買ってこなきゃ」 長門「……」コク ハルヒ「財布は持った?」 長門「持った」 ハルヒ「鍵閉めた?」 長門「閉めた」 ハルヒ「じゃあ行くわよ」トテトテ 長門「……」トテトテ ~移動中~ ハルヒ「有希って小さいくせに歩くの早いわね」トテトテ 長門「あなたが遅い」トテトテトテ ハルヒ「言ったわね」トテトテトテトテ 長門「……」トテトテ ハルヒ「ほら、あたしのほうが早い」トテトテトテ 長門「急ぐ理由がわからない」トテトテ ハルヒ「ぐっ」 ハルヒ「有希って晩御飯まだでしょ?」 長門「……」コク ハルヒ「なんか食べたいものある?」 長門「カレー」 ハルヒ「いつもそれじゃない?作る方としてはもっとレパートリーを増やしてくれた方が、作りがいあるんだけど?」 長門「……」 ハルヒ「って、なんか奥さんの台詞ね、これ」 長門「ハンバーグ」 ハルヒ「いいわよ。それもあたしの得意料理のレパートリーにあるから」 長門「期待する」 ~スーパーにて~ ハルヒ「さて、明日のお弁当の中身どうしようかしら」 長門「カr」 ハルヒ「いい加減にしなさい」 長門「……」 ハルヒ「……そもそも、何を基準で勝ち負けにするか決めてなかったわね」 長門「……」キョロキョロ ハルヒ「明日みんなで決めればいっか」 長門「……」キョロキョロ ハルヒ「さっきからなに探してるの?」 長門「弁当箱」 ハルヒ「え?」 長門「明日お弁当を持っていくなら箱は必要」 ハルヒ「いや、だから、有希ってお弁当学校持ってたりしたことないの?」 長門「ない」 ハルヒ「……」 長門「?」 ハルヒ「いつもどうしてるの?」 長門「禁則事項」 ハルヒ「は?」 長門「ジョーク」 ハルヒ「はぁ、まぁいいわよ。食材コーナーにはないからあっちに探しに行きましょ」 長門「……」コク ハルヒ「スーパーにしては結構種類あるわね」 長門「……」キョロキョロ ハルヒ「どれにするの?」 長門「これ」 ハルヒ「それは保存用のタッパーよ、それ以前に大きすぎよ!」 長門「いける」 ハルヒ「ダメよ」 長門「……」ジー ハルヒ「そもそもそれだと鞄に入らないじゃない」 長門「……うかつ」 ハルヒ「有希は大食いだからなぁ……これくらいが妥当じゃない?」 長門「小さい」 ハルヒ「あたしの二倍はあるわよ?」 長門「……わかった」 ハルヒ「なんか子供をあやしてるみたい」 長門「肉体的には同年齢」 ハルヒ「肉体的?有希の方が幼く見えるけど?」ニヤ 長門「……」 ハルヒ「明日のお弁当のおかずはこんなもんね。他食べたいものある?」 長門「カr」 ハルヒ「ないみたいね。それじゃレジ行きましょ」 長門「……」コク ハルヒ「今日もワリカンよ?有希っていつも全部払おうとするんだもの」 長門「作るのは私ではないから」 ハルヒ「じゃあ今日は有希も一緒にやりましょ?」 長門「一緒に?」 ハルヒ「そう、あたしのお手伝い」 長門「いい」 ハルヒ「まったく、どっちのいいよ?」 長門「肯定」 ハルヒ「よろしい」 ~帰宅中にて~ ハルヒ「日が落ちると涼しくていいわね」 長門「……」コク ハルヒ「……あっ、流れ星だ」 長門「……」トテトテ ハルヒ「流れ星が消えるまでにお願い事を、三回言えば願いが叶うかぁ。まず無理ね」 長門「無理」 ハルヒ「なんか短文でないかしら……」 長門「………」 ハルヒ「死ね死ね死ね、とか?」 長門「あなたが言うと笑えない」 ハルヒ「いつもの有希みたいにジョークよ」 長門「あなたのジョークは厄介すぎる」 ハルヒ「そう?」 長門「故に笑えない」 ハルヒ「そもそも笑わないくせに」 長門「あなたには才能がない」 ハルヒ「言ってくれるわね」 長門「言った」 ハルヒ「いつか笑わせてやるんだから」 長門「そう」 ~長門宅にて~ ガチャ ハルヒ「ただいまー」 長門「……」 ハルヒ「有希も言いなさいよ」 長門「中には誰もいない」 ハルヒ「いいから」 長門「ただいま」 ハルヒ「おかえり。ね、いるときはいるのよ」 長門「そう」 ハルヒ「そうなのよ」 ハルヒ「とりあえず今日買った食材を冷蔵庫に閉まっておいて」 長門「わかった」 カチャカチャ パタン 長門「閉まった」 ハルヒ「じゃあ少し休んでから、夜ご飯の支度しましょ」 長門「……」コク ピッ ハルヒ「どの番組もつまんないわね」 ピッ 長門「そう」 ピッ ハルヒ「どれもこれも前見た番組のパクリみたいな内容じゃない」 ピッ ハルヒ「TV見ててもつまんないし、晩御飯作りましょ?」 長門「それがいい」 ~食事後~ 長門「ごちそうさま」 ハルヒ「おそまつさま。なんかこの雰囲気にも慣れてきたわね」 長門「?」 ハルヒ「あたしが有希の家に来て、二人でご飯食べて、ゴロゴロして、色々話して、と言っても有希は聞くのが専門よね」 長門「……」 ハルヒ「ふふ。悪くない、悪くないわ。なんか通い妻みたいで変な気分だけど」 長門「悪くない」 ハルヒ「有希も?」 長門「……」コク ハルヒ「そっか。……あたしね、これからも有希とはずっと一緒にいたい」 長門「大丈夫。私が守る」 ハルヒ「ふふふ。私よりちびっ子の癖になに言ってんのよ」 長門「……」 ハルヒ「お風呂ありがと」 長門「構わない」 ハルヒ「明日はお弁当作んなきゃだし、早く寝ましょう」 長門「……」コク ハルヒ「あたしは髪乾かしてから寝るわ。おやすみ、有希」 長門「おやすみなさい」 ハルヒ「……」 ~翌日~ ???「……ルヒ、……う朝、起……」 ハルヒ「う~ん」 ???「もう……、……て」 ハルヒ「あ、あとごふん」 ???「わかった」 ハルヒ「……ん」Zzzz ???「いい加減に起きて」ポカ ハルヒ「……えぇ?ふわぁ~あ、おはよう有希」 長門「おはよう」 ハルヒ「なんか有希のうちって安心して寝れるわ」 長門「そう」 ハルヒ「そうなの。ところで今何時?」 長門「午前八時ちょうど」 ハルヒ「……え?」 長門「午前八時ちょうどと言った」 ハルヒ「……!や、やばいじゃない!約束まで二時間しかない!」 長門「正確には一時間五十八分三じゅ」 ハルヒ「やばいわ!ご飯に火入れなきゃ!」 長門「もう入れた」 ハルヒ「でかしたわ有希!」 長門「当然」 ハルヒ「それじゃあ、すぐ顔洗ってくるから台所で待ってて!」 長門「わかった」 ~駅前にて~ 鶴屋「おはようハルにゃん!」 みくる「おはようございます」 ハルヒ「おはよう、ほぼ同時についたわね」 鶴屋「そうだね!ちゃんとお弁当は持ってきたかい?」 ハルヒ「ばっちりよ!ね、有希?」 長門「……」コク ハルヒ「それで今日はどこ行くの?」 鶴屋「ふふふ。実はこの間、こんなものを貰ったのさ」バッ みくる「チケット、ですか?」 鶴屋「そうさ!五月の半ばにオープンしたばかりの、あの遊園地のチケットだよ!」 ハルヒ「あの遊園地!CMとか見て興味があったのよね、実は」 みくる「あ、あそこってジェットコースターが目玉なんですよねぇ……」 鶴屋「んふふふふ。頑張ろうね、みくる♪」 みくる「ひぃ」ビク ハルヒ「あれ?遊園地ならお弁当いらないんじゃないの?」 鶴屋「あそこの飲食店って、めがっさ混むみたいなんだよ」 ハルヒ「そうゆうことか」 鶴屋「そう、せっかく遊びに行くんだから、少しでも遊ばないとね」 ハルヒ「賛成だわ。それじゃあとっとと行きましょ!」 鶴屋「おー!」 ~遊園地にて~ ハルヒ「……これは」 みくる「……想像以上に」 鶴屋「……人だらけだね」 長門「……うるさい」 ハルヒ「なにはともあれ……遊ぶわよ!有希、あれ、あれ乗ろ!」グイ タタタッ 鶴屋「ありゃ、行っちゃた」 みくる「ですね」 鶴屋「あたしたちも行くよ!」 みくる「は、はぁい」 タタタッ ワーー! みくる「こ、これに」ブルブル キャーー! みくる「の、乗るんですか?」ブルブル ギャーーーーー! ハルヒ「だってこれが目玉なんでしょ?みくるちゃんが自分で言ってたじゃない?」 鶴屋「観念しなよ、みっくる♪」 みくる「そ、そんなぁ」ブルブル 長門「面白そう」 みくる「長門さんまでぇ~」 ハルヒ「女は度胸よ!」ガシッ みくる「ひ、ひぇ~」ズルズル みくる「ど、どんどん高くなってきましたよ?」 みくる「レ、レ、レ、レールが、み、見えませんよ?」 みくる「え?落ち……キャアァァッァァァァァ!!!」 みくる「わぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!!」 みくる「ひゃぁあっぁぁぁぁぁぁ!!!」 みくる「……、……。……」 ハルヒ「いやー!凄かったわね、有希!」 長門「ユニーク」 鶴屋「たしかにみくるはめがっさユニークだったっさ!ほんとに悲鳴上げるんだもん!あっはっはっはっはっは!」 みくる「す、少し、うっ、や、休ませてくださぃ」 ハルヒ「何言ってるの、まだ一つ目じゃない!次行くわよ、次!」 みくる「こ、これって」 長門「ホラーアトラクション」 ハルヒ「さぁ行くわよ!」 みくる「む、無理ですよぉ~」 鶴屋「結構怖いみたいだよ、ハルにゃん」 みくる「あれ?」 ハルヒ「そうなんだ、でもどんと来いよ!」 みくる「わ、わたし入らなくていいんですかぁ?」 ハルヒ「こういうとこって本物が出たりするらしいじゃない?」 みくる「あ、あの~」 鶴屋「TVで見たことあるっさ!」 ハルヒ「出てきたら捕まえてやるわ!ね、有希」 長門「……」コク スタスタ みくる「置いてかれた……。わ、わたしもい、行きます!」トテトテ ハルヒ・鶴屋(作戦通り!) みくる「ふぇ~、ま、真っ暗ですよぉ」ブルブル みくる「ひゃ!い、今向こうに、だ、誰かいましたよ~」ブルブル みくる「え?後ろ?……ひぃゃぁぁあああっぁぁぁぁ!!!」パタパタ みくる「きゃ!ひっ!」コテン みくる「……うぅ、うぅ、うぅぅぅ」ポロポロ ハルヒ「ご、ごめんね、みくるちゃん。まさかこんなに怖がるとは思ってなかったのよ」 みくる「ひっく、ひっく」ポロポロ 鶴屋「悪ノリしすぎたよ、あたしからもごめんね?」 みくる「うぅっ、も、もう大丈夫です、ひっく」グス 長門「ユニーク」 ハルヒ「こら!有希!」ポカ みくる「もうそろそろ、お昼だしお弁当にしませんかぁ?」 鶴屋「そうしよ!あそこの芝生を陣取ろうよ!」 ハルヒ「賛成!」 長門「……」グゥゥ トテトテ ~芝生にて~ ハルヒ「昨日話した勝負のこと覚えてるわね?」 鶴屋「もちろんっさ!」 ハルヒ「基準は見た目と味でいいわよね?」 みくる「はい」 鶴屋「一生懸命作ったからね。この勝負いただいたよ!」 ハルヒ「ふふふ、ではいざご開帳!」 パカッ 鶴屋「あ」 みくる「そんなぁ~」 ハルヒ「こんなのって」 長門「……」 ハルヒ「……そういえば鞄持ったままアトラクション回っちゃたわね」 長門「グチャグチャ」 鶴屋「これはさすがにショックだよ……」 みくる「でも、形は悪くても食べられますから」 ハルヒ「わかってる、わかってるわ」 鶴屋「それでも、苦労が水の泡ってのはねぇ……」 長門「……」モグモク ハルヒ「勝負はお預けね……」 ~食事後~ ハルヒ「それじゃあ、あたしと鶴屋さんでフリーフォールみたいの乗ってくるわね」 鶴屋「みくるはそこのベンチで休んでて!」 みくる「わかりましたぁ」 ハルヒ「有希も来る?」 長門「……」フルフル ハルヒ「そう、それじゃあそこであたしたちの勇姿を見てなさい」 長門「……」コク みくる「ふぅ、お二人とも元気ですねぇ」 長門「……」コク みくる「……」 長門「……」 みくる(き、気まずいよぉ~) 長門「朝比奈みくる」 みくる「は、はひ!」 長門「?」 みくる「なんでもないです、続けてください」カァァァ 長門「質問がある」 みくる「質問ですか?」 長門「この先はどうする?」 みくる「え?多分ご飯でも食べにいくんじゃないですか?」 長門「違う。今後の動き。私は涼宮ハルヒの力の観察」 みくる「わたしは……監視です。もとよりそれが目的ですから」 長門「なぜ監視を?」 みくる「禁則事項です」 長門「この後世界は、涼宮ハルヒはどうなる?」 みくる「禁則事項です」 長門「今まで起きてきた出来事は全て予定通り?」 みくる「禁則事項です」 長門「そう。ならいい」 みくる「……。長門さんは観察が目的なんですよね?」 長門「……」 みくる「観察の対象と仲良くなるのは、いいことなんですか?」 長門「私だけではないはず」ジー みくる「わたしはそんなつもりではなかったんです!でも長門さんは涼宮さんとは……親友なんですよね?」 長門「そう」 みくる「わたしは、わたしはこんなはずじゃなかった……なかったんです……」 長門「?」 みくる「……これ以上は言えません」 長門「そう」 みくる「長門さんはどうするんですか?」 長門「変わらない。いつも通り。しかし」 みくる「?」 長門「私という個体は涼宮ハルヒのそばにいたいと思っている」 みくる「……」 長門「これは私の意志。涼宮ハルヒは私を必要としてくれている」 みくる「……そうですよね」 長門「それに答えるのは親友として当然」 みくる「……わたしは」 長門「古泉一樹に新たな鍵は私だと言われた」 みくる「古泉君が?」 長門「そう。そのことでどうなるかはわからない。ただ、涼宮ハルヒに危害を加えるなら、誰であっても容赦しない」 みくる「……わたしに関しては大丈夫です。そんなことをする理由がありませんから」 長門「そう」 みくる(……わたしは、わたしはただの監視者だから……これからもただ見ているだけの……) 鶴屋「みっくる~!いや~めがっさすごかったよ~!こう、ビューンとさ、ってみくる?」 みくる「……え?」 鶴屋「なんか元気ないよ?大丈夫?」 みくる「だ、大丈夫ですよぉ」 ハルヒ「どうせ有希が変なこと言ったんでしょ?最近辛口なのよね、このコ」 みくる「ち、違いますから、はしゃぎすぎて気分が悪いだけですよ」 鶴屋「無理しちゃダメだかんね?」 みくる「もう平気ですよ」ニコ ハルヒ「それじゃあ激しいアトラクションは一旦休憩にしましょ」 鶴屋「そうっさね。……さっきまでみくるは長門ちゃんと話してたの?」 みくる「はい。長門さんとあんなにおしゃべりしたの初めてです」 ハルヒ「有希と会話が続くなんて凄いわね。あたしですら難易度が高いのに」 鶴屋「なに話してたの?」 みくる「長門さんとの秘密なんです」 ハルヒ「有希、教えなさいよ~」 長門「禁則事項」 みくる「……」 鶴屋「……。みくる、なんか飲み物買ってくるけど何がいい?」 みくる「ありがとうございます。お茶がいいです」 鶴屋「わかったよ。長門ちゃん、一緒に買いにいこ?」 長門「……」コク ハルヒ「有希、あたし炭酸がいい」 長門「わかった」 ~自販機前にて~ 鶴屋「……ねぇ、長門ちゃん?」 長門「何?」 鶴屋「みくるに何言ったの?」 長門「質問をしただけ」 鶴屋「質問?どんな?」 長門「言えない」 鶴屋「なんで?」 長門「言えない」 鶴屋「なら、単刀直入に聞くけど、……みくるをいじめてたのかな?」 長門「……」フルフル 鶴屋「信じていいの?」 長門「どちらでも」 鶴屋「……」 長門「……」 鶴屋「……うん、疑ってごめんよ?みくるってあんなんだからさ、友達として不安だったんだよ」 長門「そう」 鶴屋「長門ちゃんだって、ハルにゃんのこと見捨てられないでしょ?」 長門「もとより見捨てない」 鶴屋「だよね、とはいえ、疑ってほんとにごめんね」 長門「いい。ただ」 鶴屋「なに?」 長門「今小銭がない」 鶴屋「先輩にたかる気かい?」 長門「違う、悪いと思っているなら、お金を貸して欲しい」 鶴屋「いいよ、後輩のぶんくらいお姉さんが買ったげる♪」 長門「感謝する」 鶴屋「はい、みくる」 みくる「ありがとうございます」 ハルヒ「……抹茶の炭酸ってなによ?」 長門「あった」 ハルヒ「炭酸と言ったのはあたしだけど……これはないわよ」 長門「飲まず嫌い?」 ハルヒ「うっ……、いいわ、飲んでやるわよ!」ゴク 鶴屋「ど、どお?」 ハルヒ「……」フルフル 長門「ユニーク」 ハルヒ「……デコピンよ」ピシ 長門「……」ナデナデ ハルヒ「鶴屋さん、今日はありがとね」 鶴屋「なに、いつもみくるがお世話になってるからね。そのお礼さ♪」 みくる「ふふふ」 ハルヒ「あたしだってみくるちゃんにお世話になってるわよ?」 みくる「涼宮さん……」 ハルヒ「コスプレとか、部室の掃除とか、お茶汲みとか」 みくる「え、えぇ~」 鶴屋「先輩をパシリ扱いとはいけない子だね?こうしてやる!」 ハルヒ「や、やめて、鶴屋さん、アハハ、うそ!冗談だから!アハハちょ、くすぐったいってば~」 鶴屋「参ったか!」 ハルヒ「……このあたしが、はぁーはぁー、やられて、黙ってる、とでも?」 鶴屋「ん?」 ハルヒ「えい!」 鶴屋「ハルにゃん、ひ、卑怯だよあっはっはっは、そこは、はんそ、反則だよ、あっはっはっは」 ハルヒ「やられたらやり返さないとね」 鶴屋「覚えてろよ~」 ハルヒ「返り討ちにしてやるわ!」 鶴屋「せっかくだしこの後ご飯でも食べ行く?」 ハルヒ「そうね。どこ行く?」 長門「……」クイクイ ハルヒ「ん?どしたの有希?」 長門「あれ」 ハルヒ「あれ?」 鶴屋「あれはバイキングだね!」 みくる「も、もう怖いのいやですよぉ」 ハルヒ「みくるちゃん、ただの食べ放題よ。有希あそこがいいの?」 長門「……」コクコク ハルヒ「二人ともあそこでいい?」 鶴屋「あたしは構わないっさ!」 みくる「大丈夫です」 ハルヒ「それじゃあ、行きましょっか」 長門「……」トテトテ ~帰り道にて~ 鶴屋「いや~めがっさお腹いっぱいだよ」 長門「満腹」ケプ 鶴屋「女四人がバイキングでがっついてる光景は、シュールだったろうね」 ハルヒ「がっついてたのは鶴屋さんと有希だけでしょ?あたしとみくるちゃんは腹八分よ」 みくる(それでも食べすぎちゃいました……) 鶴屋「それじゃあ、ここらでお別れだね」 ハルヒ「そうね、今日は楽しかったわ。ね、有希?」 長門「……」コク 鶴屋「そりゃ良かった。誘ったかいがあったってもんだよ」 ハルヒ「じゃあまた学校でね。鶴屋さん、みくるちゃん」 鶴屋「バイバイ」 みくる「あ、あの、長門さん」 長門「何?」 みくる「少し、少しだけいいですか?」 長門「構わない」 みくる「お二人は少しだけ待っててください」 鶴屋「わかったっさ」 ハルヒ「有希はあたしのだから持って帰っちゃダメよ」 鶴屋「おっ、ラブラブだねぇ~」 ハルヒ「ジョークよ、ジョーク」 みくる「ちゃんとお返ししますから」ニコ 長門「何?」 みくる「本当はこんな事を言うのは禁止されています」 長門「……」 みくる「でも、でもわたしも長門さんも、望む望まないに関わらず、主要人物の一人になってしまいました」 長門「……結果的に私は望んだ」 みくる「そ、それは長門さんの場合です!」 長門「わかっている」 みくる「……同じ『部活仲間』としての忠告です。涼宮さんとは距離を置いてください」 長門「……何故?」 みくる「……この間私向けにそういう指令がきました。内容は知りません」 長門「禁則事項では?」 みくる「……話は以上です。また」スタスタ 長門「……」 ハルヒ「それでみくるちゃんはなんだって?」 長門「秘密」 ハルヒ「仕方ない、くすぐってでも吐かせてやるわ」 長門「無駄」 ハルヒ「どうよ!ほらほら!」 長門「まるで無駄」 ハルヒ「この不感症め!」 長門「なんとでも」 ハルヒ「あぁ、つまんなーい」 長門「そう」 ハルヒ「まぁ、いいわ。帰りましょ」 長門「?」 ハルヒ「~♪」 長門「あなたの家はこっちではない」 ハルヒ「あれ?言ってなかったけ?あたしの家今誰もいないから、有希の部屋泊まるって」 長門「初耳」 ハルヒ「そうだっけ?」 長門「そう」 ハルヒ「一泊も二泊も変わんないでしょ?さ、帰るわよ」 長門「……」コク ~長門宅にて~ ガチャ ハルヒ「ただいま~」 長門「……」 ハルヒ「……ただいま~」 長門「……」 ハルヒ「た・だ・い・ま」 長門「……ただいま」 ハルヒ「違う!あたしがただいまって言ったら、有希はおかえりでしょ?」 長門「……」 ハルヒ「もう一度よ。ただいま」 長門「おかえり」 ハルヒ「次は有希」 長門「ただいま」 ハルヒ「おかえり」 ハルヒ「あぁ~楽しかったぁ~、けど疲れたぁ~」 長門「六時間遊んだ」 ハルヒ「あれ?そんなもんだった?」 長門「充分」 ハルヒ「そうね、これ以上疲れたら明日筋肉痛になっちゃうわ」 長門「そう」 ハルヒ「有希は平気?」 長門「……」コク ハルヒ「文学少女のくせに丈夫ね」 長門「……そう」 ハルヒ「実はね」 長門「?」 ハルヒ「今日の団活中止になって嬉しかったの」 長門「何故?」 ハルヒ「一応表には出さないようにしてるけど、まだちょっとあいつと一緒に行動するのが、ね」 長門「……」 ハルヒ「そりゃ、盛大にふられてるもの、気にしてないっていったらウソじゃない?」 長門「そう」 ハルヒ「やっぱり気になっちゃう……ほんとに恋ってめんどくさい」 長門「……」 ハルヒ「未練がましいのなんてらしくないわね」 長門「……」コク ハルヒ「今の話忘れて!お終いお終い!さぁ明日も休みだし!今日こそ夜通し遊ぶわよ!」 長門「構わない」 ハルヒ「しっかり朝日を拝んでやるんだから!」 長門「そう」 ハルヒ「……」Zzzz 長門(まだ十二時) ハルヒ「……」Zzzz 長門「……」 ハルヒ「……ん……いや」グス 長門「?」 ハルヒ「……ゆ……き」グス 長門「……何?」 ハルヒ「おねが……いかな……いで」グス 長門「私ならここにいる」ギュ ハルヒ「……ん……」Zzzz 長門「……」ギュー --同じ『部活仲間』としての忠告です。涼宮さんとは距離を置いてください-- 長門(どこにも行かない。ここが私の場所) ~To Be Continued~
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電気を付けたら部屋が明るくなりました、みたいないつも通りの放課後。俺はいつも通り占領もとい借りられた文芸室に足を運んだ。にしても太陽もたまには休めばいいのにどうしてここ最近晴天続きなんだ。 真夏の太陽を恨みながらドアを開けると、そこにはチューリップの花のように可憐なメイドがのんびりお茶を沸かしてい・・・なかった。 ただ部室の真ん中で怯えた朝比奈さんが団長様に気圧されていた。 ハルヒ「だから答えてちょうだい!どうやって瞬間的に私の前に姿を現せたのよ!?」 みくる「あうあうあうあうあう」 ハルヒはなんで怒っているんだ?いや、というより爆発寸前の太陽ような笑顔だな。それに「不思議を見つけた」みたいな楽しさを感じる・・・まさか。 少し会話(というより恐喝)を思い出そう。朝比奈さんが突然姿を現した、だと。しかもハルヒの目の前で。 俺が頭痛を感じていると古泉が営業スマイルのまま近寄ってきた。 古泉「事態は深刻です」 なら深刻そうな顔をしろ、仮面か? 古泉「これは失礼。しかし涼宮さんの前ではこの顔でなくてはなりません」 そういやそうだったな。ある程度の事情は察したが状況を詳しく説明してくれ。 古泉「僕にもよくわかりません。僕がここに来たころにはすでにああいう感じでした。」 そうかい。とりあえず止めるためにハルヒのところへ行った。 キョン「ハルヒ、何があったか知らんが少し落ち着け」 ハルヒ「あんたは黙ってて!みくるちゃん、教えなさい!」 みくる「・・・」 まあ予想はしていたが相手にされなかったわけだ。馬の耳に念仏とはこのために作られた言葉なんだと感心した。 古泉「まあこんな感じです。僕が止めても無駄でした。」 無意味に近づいてきた役に立たない超能力者を無視し、部室のすみにいる無口な宇宙人の所へ行った。 長門は椅子に座ったまま、相変わらず俺が一生読まなそうなぶ厚い本を読んでいた。俺が話しかけようとした時長門が顔を上げてこちらを見た。 長門「対処法が見つからない。」 実は俺の耳に耳せんを付けていたため聞き間違えました、というわけはなくそのつぶやきをはっきりと聞いた。 長門「現在の涼宮ハルヒの力が今までより強まっている。おそらくとても興味をそそがれる不思議を発見したから。」 ハルヒの声がうるさくて聞き取りづらかったがこんなところか。 キョン「でなんで対処法がないんだ?眠らせて記憶を消せば」 と言いかけて当たり前のように非現実的な事を話す自分に落胆した。 長門「今彼女は朝比奈みくるの不思議について知りたがっている。それを邪魔する事象を物理的にも精神的にも排除する。」 ということは今のあいつにはとんでも能力が効かないということか? 長門「そう」 ん?じゃあなんで朝比奈さんはすぐに暴露しないんだ。その「排除」は「朝比奈さんの暴露への抵抗」には適用されないのか、と珍しく難しいことを思い付いた。 長門「朝比奈みくるは彼女の信頼下にある。ゆえに傷つけるような行動をしたくないのだと思われる。」 暴れん坊将軍も逃げ出すようなこの光景を見てよく言えるな、とは口には出せない。 おや?見つめつづければ吸い込まれそうな長門の眼に、わずかだが懇願の光が見える。まさかな。 とそこへ古泉がまた近寄ってきた。顔が近いぞ離れろ。 古泉「これは失礼。このまま放っておくと未来人について明らかになるのは間違いないでしょう。」 キョン「一応聞いておくが、ハルヒが秘密を知るとどうなるんだ?」 古泉「自覚のない神が覚醒します。」 キョン「わけわからん。」 AAでも張りたいぐらいだ。30文字以内で答えよ。 長門「AAとは何か知らないが、端的にいえば力の暴走。彼女の中の常識が塗り替えられ、世界が彼女の思うがままになる。」 さすが長門、どこぞのイケメンと違い頼りになる。 しかしそれは厄介だな。そんなことができれば本当に世界がSOS団になってしまう。 長門「あなたの心も操作される。」 キョン「まじめに対策しないとまずいことだな。」 さてとあの闘牛をどうにかしないと。いやフクラミのではないぞ。 長門「そうなれば私とあなたが結ばれない。」ボソ 長門が小さい声でなにかをつぶやいた。もう一度確認したら、なんでもない、と返され読書に戻ってしまった。 まあさほど重要なことではなさそうだから、今は事態の鎮静化をしよう。 ふとハルヒ達の方に目をやると みくる「キャアアア!」 キョン「うおおぅ!」 急に朝比奈さんが俺に抱き着いてきた。とうとう愛の告白を受けてしまったか、と妄想を一瞬だけ広げた。一瞬だぞ。 現実に戻ると朝比奈さんが眼に涙をためて、俺に助けを求めてきたことを察する。とそこへ宇宙人からも危惧される人物が作曲中のベートーベンみたいな顔で近寄ってきた。朝比奈さんはあわてて俺の後ろへ移動して震えていた。うーんかわいらしい。 ハルヒ「キョン!そこをどきなさい!」 キョン「絶対断る」 ハルヒ「じゃあ横に移動しなさい!」 ここでからかってみることにした。いや動かないよりマシだろ。 キョン「わかった。」 ハルヒ「わかればよろしい。」 キョン「ほらよ。」 俺は体の向きを変えずに長門の方に移動した。すると朝比奈さんが一緒に移動した。 ハルヒ「み~く~る~ちゃ~ん!」 そして今度はいらいらした顔でどなった。その後も俺を巻き込んで大声を浴びせ続けた。 みくる「キョンくん」 小さな声が後ろから聞こえた。なんですか朝比奈さん。礼なら後でしてください。 みくる「それもありますけど、違います、テヘ。」 と舌をだしてウインクした。効果は抜群だー! とそこにトビラを開ける音がした。 この部屋内には団員が揃っているはずだ。鶴屋さんかな、しかしそれはそれで困るが。 キイイ そこに見えたのは朝比奈さんである。 俺と目があった直後朝比奈さんは弥生人が生きた恐竜に出会ったみたいな顔をしたまま扉を閉めた。ってなんで朝比奈さんが二人いる? みくる「あの時の私だ」 ん?ということはあなたは未来の朝比奈さん? みくる「正確にはえ~と3日後です。なぜここに来るように言われたかわ知らないんです。」 ではせめてこの後起こることはわかりますよね?ハルヒに生返事をしながら、震える小猫の答えを待った。 みくる「私は掃除当番での仕事で遅れて部室に来たんです。で部室に行く途中で鶴屋さんに会いました。」 あながち俺の予想は外れてなかったんだなぐへぇ。 ハルヒ「キョン!私が大人しい内にどきなさい!」 襟首を引っ張っといてよく言えるな。あっ朝比奈さん、俺の服を引っ張るのは嬉しいですが服が伸びてしまいますよ。 なにやら外が暗くなってきた。あれ天気予報じゃ晴天白日のはずだが。 みくる「あっすいません。で私と鶴屋さんで部室に行ったんです。で最初に私が入ろうとしてすぐに気づいたんです。」 襟首にかかる力がふいに消えたからようやく応答できる。 キョン「朝比奈さんがもう一人いることですね。」 みくる「そうです。で私が二人で図書室に行くよう頼んだんです。鶴屋さんは突然のお願いを承諾してくれました。」 ふと止められる気のない目覚まし時計のようなハルヒの声のベクトルが別のほうに向いてることに気づいた。 ハルヒ「今の会話にあった『キカン』て何よ!怪しいわね、電話の内容的に『機関』て書くんでしょ!教えなさい古泉くん!さもないと」 なんか部室のトビラの前で副団長の権利が云々と話を続けているが、それ以前になぜ古泉が新たな犠牲者に?その解答はすぐ隣の椅子から聞こえた。 長門「古泉一樹はおとりになっている。その間に朝比奈みくるから情報を聞き入れて。」 なるほどな、二人ともありがとよ。では朝比奈さん続けてください。 みくる「えーと図書室に着いた頃に黒い雲が雨を降らしました。夕立みたいな感じです。」 言い終わらぬ内に雨が降ってきた。たしかに夕立だな。 だが俺は言葉に表せられない不安がよぎる。この風景はいつぞやの冬の遭難と似ている。 ふと俺は長門を見た。長門は外の雨、いや雲を見上げている。その眼に僅かな不安を感じたのは多分俺だけだ。 みくる「キョンくん。キョンくん!聞いてますか!?」 キョン「すいません、ぼーっとしてました。」 みくる「もう。しばらく図書室で私たちは勉強してました。でも勉強中に未来から指令がきて、すぐに私は鶴屋さんを連れて部室に戻りました。」 朝比奈さんがぷっくりと頬を膨らませている。急所に当たったー!効果は抜群だー! ショックで廃人になりかけた俺に長門が手を引いてきた。両手に花だぜ。 長門「情報統合思念体にアクセスできない。」 キョン「なんだと。」 長門は冗談を言わない奴だ。とすればまさか今の状況は。 長門「冬の遭難時と似ている。私や涼宮ハルヒ、朝比奈みくるは能力を使用できない。」 さっきの予感はこれか。しかも学校でかよ。下手すりゃ一般人に被害が出るじゃねえか。 俺が打開策を考えようとしたところで後ろから猪が襲ってきた。 ハルヒ「なーにみくるちゃんや有希を誘惑してんのよバカキョン!離れなさい!」 いきなり横に突き飛ばすな。ベクトルを操作する力の開発なんて受けてない俺は倒されるがままに朝比奈さんの体に俯せで倒れた。 いてて大丈夫ですか朝比奈さん。て何顔を赤くしてるんです?俺は倒れる直前に手を床の方に突き出して覆いかぶさらないようにしましたよ?ん、なんで床がこんなに柔らかいんだ?・・・て キョン「柔らかい!?ゲフッ!」 あれーおれいまはらをけられたきがするぞ。しかもあさひなさんに。 ハルヒ「いい加減にしなさい!」 キョン「事故だ!過失だ!冤罪だ!」 ハルヒ「過失でも立派な犯罪じゃない!」 それもそうだ。とりあえずハルヒ裁判官に無罪を説得するために腰を上げると そこは部室じゃなかった。山の頂上付近の石をご想像してもらえるとありがたい。妙にゴツイ石や岩が辺りに広がっている。CGではない、その証拠に石を持ち上げてみたが重い。 一瞬で風景が変わっている。WHY? まあ唯一の救いは団員が全員すぐ近くにいることだ。朝比奈さんは倒れたまま、てか気絶してないか? にしてもここはどこだ?いつぞやのかまどうまの時と似ている気がするが。 長門「そう」 いつも通りの長門の反応にほっとした時、ガンッと言う音がすぐ後ろの方で聞こえた。俺は地面から物理法則を無視した物体が湧いてきたか、と考えながら振り返ると そこに赤い装飾をまとった大きめの石を両手で持っている古泉がいた。そしてそのすぐ下の床に倒れているハルヒ。 キョン「古泉!!」 俺は我を忘れて古泉の胸倉を掴み押し倒した。馬乗りになり、奴の顔を殴り飛ばそうとしたところで誰かに腕をつかまれた。顔を上げるとそこには長門がいた。 長門「彼の行動は正しい。」 キョン「友達を石で殴ることが正しいのかよ!」 長門「聞いて。」 長門の眼にほんのわずかだが水の膜ができている。そんな目をしないでくれ。俺は長門の言うことを聞くことにした。 長門「まず涼宮ハルヒに超現象を知覚されてはいけない。これは彼女が認識し興味を持たれてはいけないことを示す。」 つまりこの空間を記憶に残される前に気を失わせる必要があったんだな。 長門「私は古泉一樹に涼宮ハルヒを殴り気絶させるよう指示した。古泉一樹は最初拒絶したが、私の考えを理解したと思われる。指示通りに動いた。」 そうなのか。だが同時に俺は聞かなければならないことができた。 長門「私という個体は、あなたに彼を恨んでほしくないと願う。」 承知した。だがな長門 キョン「石で殴るというのは理解できん。俺たちは部員で友達だ。それに他の二人はともかく長門は人間にはできないことをするのは簡単だろ。」 なんで宇宙的マジックで傷つけずに気を失わせなかった、と言いかけて俺は思い出した。長門は言っていた、冬の遭難の時と似ていると。 長門「私や涼宮ハルヒの能力は今失われている。彼女をおとなしくするには絶好の機会だった。だが同時に穏便な方法で処理できなかった。」 事情は察した。だがこれだけは確認させてくれ。おまえはハルヒを傷つけるのになにも感じなかったか? 俺は立ち上がって長門の顔を凝視した。長門は俺の眼を10秒見つめた後ハルヒの方を向き、電波話以外では滅多に動かない口でたった6文字をつぶやいた。 「ごめんなさい」 俺は長門の両肩に手を置いた。俺の中を安堵と喜びが走り回った。なぜか?長門が人間らしい感情を少しずつだが着実に持ち始めていることに決まっているじゃないか。 長門の顔を見た。若干驚きの顔をしていたが嫌そうな顔をしていなかった。 みくる「ふぁぁ。皆さんおはようございます。」 俺は瞬間的に長門から離れた、いやまた何か誤解を受けるのは嫌だからな。やあ朝比奈さんおはようございます。 みくる「あわわわわ!てなんですか、ここどこですか~!?」 ブーン ずいぶん懐かしいセリフを聞いたが、今はこの状況を打破する方法を考えなければならない。 ブーン 古泉「ようやく落ち着いてもらえたようですね。押し倒された時別の意味で興奮しましたがそれはともかく、いやいやすいません。」 キョン「おまえに謝られてもちっともさっぱり全然お世辞にしか聞こえない、不思議!」 古泉「今のは聞こえなかったことにしておきましょう。とりあえず状況を整理しましょう」 みくる「ひゃあ!涼宮さんが倒れてる!キョンくんキョンく~ん!」 古泉「ここでは異能力を使えない。この空間の創造主は少なくとも涼宮さんではない。なぜなら彼女の意志で作られたのなら、気絶前と気絶後で何かしらの変化が」 みくる「キョンくん!古泉くん!長門さん!」 俺たちは見事にスルースキルを発動しつつ、古泉の話を聞いていた。 ブーン さっきから遠くで聞こえる虫の音がしつこいなあ。 古泉「あなたが僕にうっとおしそうな顔をするのは珍しいですね。どうしたんですか?」 いや珍しいことではないだろ。だが今は違う。 キョン「さっきから虫の音がうるさいんだよ。殺虫剤カモーン。」 古泉「それは変ですね。この空間には人間以外入れないはずですが。」 みくる「なんで皆さん無視するんですか~!私の言うこと聞かないとミンチにしてやりますよ~」 古泉「長門さんは虫の音が聞こえましたか?」 長門「聞こえない。だが向こうに」 みくる「私泣きますよー!」 古泉「聞こえませんか、僕もです。」 キョン「待て長門。今なんて言った?」 長門「聞こえない、と言った。」 違う、そのあとだ。よく聞こえなかった。 長門「向こうに何かいる。」 俺たちは長門の見ている方向を凝視した。そこには 「ブーンブーンブーン」 擬音語を言葉にしたような音を出す、どこかで見た気がするAAが空を飛んでいた。 あれはなんだ、敵か? 古泉「どうもそのようですね。そして同時に倒さなければならないでしょう。」 キョン「だがどうやって倒すんだ?」 ブーンという声が突然大きくなってくるとともにそいつも大きくなってきた。つまり キョン「接近してきてる。みんな逃げろ!」 俺たちはあてもなく走った、俺は倒れているハルヒをおんぶしながら。意識のない人間は重いと聞いたことがあるが、ハルヒは軽かった。 AA「時間の果てまでブーン!」 よくわからないことを叫んだかと思ったら、奴はいつのまにか俺たちの頭上10mにいた。 奴の大きさはこの距離で一般男性の平均身長ぐらいはありそうだ。 長門「あれは生物ではない。」 なぜそんなことがわかる? 長門「今までの経験と言語化できない決定」 無理矢理訳すと『女の勘』ということか。だが生物でないならなんだ。 長門「わからない」 古泉「僕の方にも質問してくださいよ、のけものみたいじゃないですか。」 空気と化した朝比奈さんよりはマシだろうよ。セリフがあるのとセリフすらないのはかなり違うぞ。 古泉「思うに長門さん、あれはゲームの敵と同じようなものではないでしょうか。あれに殺意を感じません。」 キョン「なるほどな。だとするとプログラムに従って動いてるんだな。」 となるとプログラマーがいることになる。だが疑問がある。 キョン「なんでこんなことをするんだ?危害を加えたいならさっさと攻撃すればいいのに。」 古泉「僕にもわかりません。」 言い忘れたが、話している間も俺たちは常に奴の動きを見ている。て誰に言ってんだ俺。 ん?なんかさっきよりも奴が近づいてないか? 古泉「このまま待機してても拉致があきません。少し刺激を与えましょう。」 と言いながら古泉は大きめの石を拾い奴に石を投げ付けたが、奴はその石から逃げるように体を曲げた。そして落下してくる石は俺の眼の前でだんだん大きく キョン「あぶね!古泉気をつけろ!」 長門「彼に石をあてないでもらいたい。」 古泉「すいません二人とも。」 古泉は観音様にお願いするかのように謝罪した。あとで缶コーヒーをおごれ。 古泉「いやです。ですがわかったことがあります。あれは石をあてられたくないようです。みんなで石をあてましょう。」 ほういい度胸してんな、あとで覚えてろ。とりあえず古泉の提案に生返事して、奴に石を当てることにした。 ――あれからおよそ30分―― 結論からいうと、全然当たらない。 長門「あれとの距離はおよそ8m。当たらない距離ではない。」 古泉「ですが当たりません。困ったものです。」 キョン「どっか高台はないのか」 古泉「辺りを見ればわかりますがそんなところはありません。」 おまえはいつでもスマイルだな、奴もそうだが。 古泉「一度あれと話してみたいです。」 長門「あれは生物ではないから有機生命体の言語を理解できるか困難。」 長門、冗談と本気を区別できるようになったら人間として完璧だから頑張れ。 長門「そう。」 俺達は休憩することにした。だがハルヒでないほうの神は俺たちをいじめたいらしい。俺の顔の右5cmを何かが火花を散らしながら正面から通過した。その直後にパーンなんて音がした。まるで花火のような キョン「朝比奈さん!なにやってんですか!?」 気づけば正面約十mの位置で朝比奈さんは鬼のような形相をしていた。しかもロケット花火をセットしていた、オレタチニムケテ。 みくる「ひどいですみんな。私が見えてないかのようにふるまって。グスッ」 キョン「朝比奈さん!別に無視してたわけではないんです!」 古泉「そうですよ。僕たちは空気を見てるんですから。」 キョン「バカヤロウ!んなこと言ったら」 みくる「私なんてどーせ役立たずで雑用係のロリロリメイドでしかないんだ、うわーん!」 朝比奈さんは泣きながら俺たちに向けてロケット花火を打ち続けた。ていうかどこに花火を持ってたんだ?それ以前になぜもっている?。 俺たちはとにかく逃げ回った。朝比奈さんはようしゃなく打ち続けている。 とにかく花火をなんとかしなくては、と考えた時ふと打倒朝比奈さん策を思い付いた。それは石を花火に投げつけ、ひるんだところで朝比奈さんを止める。完璧だろ。 俺は足元に落ちてる石を発射前の花火に向かって投げた。石は花火に当たると、上の方をむいて転んだ。朝比奈さんが方向を直そうと花火に近づいたとき、花火は無意味な方向へ発射された。 古泉「よくやってくれましたキョンくん。」 ん?なんのことだ?今から俺は朝比奈さんを止めに入るのだが。 古泉「えっ、まさか偶然だとは思いませんでした。感服です。」 なんだ、と思い上空を見た、いや正確には地面から8m上の空間を見た。 例の奴が赤く点滅していた。その後粉々に砕けて消えた。そういうことか、俺SUGEEEEEE! 長門「空間が壊れ始めている。この空間から脱出する。」 キョン「力は戻ったのか?」 長門は無言でうなずいた、口の両端をナノ単位で上に向けながら。 長門「今回はあなたのおかげ。私の見込んだ通りの人。」 キョン「俺はそんなすごい人じゃないぞ」 長門「・・・・大好き」 キョン「えっ・・・・」 古泉「とりあえず脱出しましょう。長門さんお願いします。」 長門「・・・KY。わかった。」 なんだこのとてつもなく不安な感じは。なにか重要な問題を忘れたような。まあ気のせいだろ。 長門「△*■Μэ⑲㏄∑¥∴」 キョン「なあ古泉。さっきから聞こえる爆音はなんだ?」 古泉「この付近で火山でも噴火してるのでしょう。」 長門「∂◎#@キョン・古泉・ハルヒ・長門・朝比奈」 朝比奈さん?あっ キョン「長門!ストップ!」 遅かった。俺たちは部室に戻っていた。ハルヒ・長門・古泉・俺は部室の机に隠れるように帰還、朝比奈さんは・・・ 俺は朝比奈さんを止めようとしたがもう遅い。朝比奈さんがセットした花火はいきよいよく放たれ、部室の窓を破っていった。 ――その後――――― ハルヒ「キョン、今日あたし何してた?」 あの後長門が朝比奈さんを眠らせ、情報操作を行った。 ガラスは割れなかったことにし、ハルヒは部室の机でうたた寝していたことにした。 ハルヒの傷も治した。未来の朝比奈さんは時間転移でどこかに行った。なにしに来たんだろう。 部室から出た直後に、今回の事をほとんど知らない朝比奈さんに会った。で今団員全員で帰路についてるわけだ。夕焼けがきれいだな。 キョン「椅子にもたれてグースカ寝てたじゃないか」 ハルヒ「あーもー一生の不覚よ!キョン、今日は夜も部活するわよ!」 冗談じゃない。俺にも休息をだな。 古泉「いいんじゃないですか?このまま放置したら閉鎖空間が発生してしまいます。」 キョン「だまれイエスマン。今日は疲れたんだ。」 ハルヒ「なんで疲れてるのか知らないけどわかったわよ。ところでさ。」 ん、珍しく声を小さくしてどうした?愛の告白なら喜んで受け入れるぞ。 ハルヒ「バカキョン!そんなんじゃないわ!私の頭に傷はない?」 キョン「別にないが。」 顔が真っ赤だぞ、とは言わなかった。 ハルヒ「・・・・・・そうよね、夢よね。」ボソッ キョン「なんか言ったか?」 ハルヒ「別に。」 さてお別れの交差点に入ったので俺たちは解散した。今日は朝比奈さんの黒い部分が見えたからよし。だがそれよりももっと印象に残ったのが 「・・・・大好き」 自分の顔が熱をおびるのがよくわかった。 俺は家に着くとまず顔を洗った。俺が夕飯を待ちわびるべく部屋に戻ったところで、妹が電話の子機を持って追いかけてきた。 キョン「誰からだ?」 妹「長門さーん」 キョン「・・・そうか」 妹「キョンくん顔赤いよーどうしたのー」 俺は妹を部屋の外へ放り投げたのち子機を耳にあてた。 キョン「長門か?」 長門「・・・そう。今から私の家へ来てもらいたい。あなたに今回の事件で聞いてもらいたいことがある。では。」 電話が切れた。さて健全な男子学生ならどう反応したらいいのかね。告白(?)された後に家に呼びだされるという状況に。 ―――数十分後――― 俺は長門の家の前に着いた。恐る恐るインターホンに指を乗せた。家に呼び出されたのはあくまであの件について聞くためだ、俺は自分にそう言い聞かせながらインターホンを押した。 「おーともなーいせかーいにーまーいお」 呼び鈴なのだろう、歌が途切れると長門の声が 「やあこんばんは。2時間ぶりですかね。」 なんで古泉がいるんだ。俺は安堵と残念感を同時に味わいつつ キョン「そう」 と無口な宇宙人のまね事で答えた。 古泉「おそらく僕とあなたの用件は同じはずです。鍵は空いてます、入ってください。」 キョン「なんで開けっ放しなんだよ。」 インターホンが沈黙したのだろう、返答はなかった。 俺はとりあえず中に入って長門達の下へ歩いた。 長門は俺を見ると顔を俯かせた。 長門「座った。」 古泉「長門さん、『座って』ですよ。」 長門「間違えただけ。」 長門は緊張してるのだろうか?珍しい。 俺達3人がONLY ONEインザハウスな机を挟んで腰を下ろすと長門が口を開いた。 長門「今から話すことは情報統合思念体の調査結果である。情報の伝達に齟齬が発生するかもしれない、実際コミュニケーションとは」 キョン「あー長門。知識豊富なのはよくわかってるから今回の事件について教えてくれ。」 長門「そう。キョンが言うなら。」 えっ?長門が俺のことをあだ名で読んだだと。 古泉「顔が赤いですよ?とうとう僕のあなたへの愛に気づいてもらえましたか。」 キョン「断じてそれはないしそっちの趣味も一切さっぱりからっきしないぞ。」 長門「二人とも聞いて。」 長門は全て話した。まずあの空間と物体の作成者は、冬の遭難時の犯人と同じだそうだ。 動機はまさにヒトラーが民主主義を唱えるかのようなものだった。 長門「彼らの目的はない。動機は『退屈』だったから。ただ彼らの言いたいことを我々は完全に解析できていないからなんともいえない。」 前回はハローの代わりに吹雪を降らしてきた。今度は退屈しのぎに数人を異空間射撃ゲームかよ。何考えてんだかさっぱりわからん。 そして朝比奈さんがなぜ未来から来たのか。どうも未来の一組織が情報統合思念体の急進派と手を組んでいたらしい。 長門「涼宮ハルヒにあえて未来人を認識させることで、どのような変化が表れるかを調べていた。朝比奈みくるはその組織に騙されていた。ちなみに今は急進派及びその組織は厳正な処分を下されている。」 朝比奈さんが図書室でされた指令は、急進派が捕まった後正規の組織が指示したもののようだ。 ん?だが疑問が残る。その疑問を代弁するかのように超能力者は言った。 古泉「未来人や急進派はあの頭の愉快な思念体の行動を知らなかったのでしょうか?彼らの目的は彼女の変化の観察ですよね?邪魔が入るとわかってたら計画自体に意味がありません。」 長門「それについては情報統合思念体も困惑している。もしかしたら彼らは未来人にすら認知されない行動力を持っているのかもしれない。」 奴らがその思念体と手を組んで空間に閉じ込められた状況を観察した、という可能性はないのか? 長門「ありえない。あれと会話することも困難であるのに、計画を立てることは不可能。」 キョン「あまりに馬鹿にされる思念体に全俺が泣いた。」 長門「あなたは一人しか・・・ジョーク?」 キョン「よく気づいた。」 ――――その後―――― 古泉「では用も済みました。僕はこれで失礼します。」 古泉は帰った。長門の告白は気になるが俺も帰ることに 長門「・・・・」 帰ろうした俺の腕の裾に小さな力がかかった。振り向くとそこにはハムスターをつまみあげるように裾をつかむ長門が俺の目をじっと見つめていた。そして長門の顔が少し赤い。 俺たちは時間の経つのを忘れたかのように見つめ合った。顔に熱を感じる。ああ今なら認めるぜ、今まで自分の心から逃げてきたからな。 キョン「・・長門。」 長門「・・・有希と呼んで欲しい」 キョン「・・・有・・希」 長門「・・・キョン」 俺はいつのまにか長門を抱きしめていた。長門も俺の腰に腕をまいていた。 おっ長門、いや有希の胸から鼓動をはっきり感じた。こいつは宇宙人なんかじゃない。それに俺は言った、冗談と本気を区別できたら完璧だと。 「おまえは人間と変わらない、いや人間なんだ。」 「・・・異能力をもってるけど、いいの?」 「この世界では当たり前なんだ。気にするな。」 「・・・そう。」 「そうだ。おまえは人間で、俺の『彼女』になるんだ。」 「・・・・なら二つだけ約束して欲しい。」 「なんだ?俺にできることならいいぞ。」 「あなたにしかできない。まず私のことを呼ぶ時『おまえ』ではなく『有希』と呼んで。」 「ああ。」 「もうひとつは・・・私の事を支えて欲しい、いつまでも。」 「もちろんだ!じゃあ俺からも一つ。いつまでも俺を支えてくれ、有希。」 「・・もちろん。」 「有希。大好きだ。」 俺たちは口づけを交わした。 あの後俺はすぐに家に帰った。お互いに何を話せばいいかわからなくなったからだ。今となっては名残惜しい。 ―――次の日―――― 放課後俺たち団員は1+1=2というぐらい当たり前のように部室に集まった。 俺は古泉とスピードをし、朝比奈さんはなぜかナースになっていた。ハルヒいわく、風通しがいいのだそうだ。実際そうらしいので特に異論はなかった。無口な少女はいつものぶ厚い本ではなく、俺でも読めるレベルの恋愛小説を読んでいた。ハルヒ?あいつはいつもの通りだ。 ハルヒ「なんか昨日から変なことを考えるのよね。」 今日ハルヒの様子はずっと変だった。何か考え事をしていたのだ。なんだ、今度は危ない水着を朝比奈さんに着せるつもりか?「風通しがいいのよ」とか言って。 ハルヒ「させたいけど違うわよ!なんか古泉くんに石で殴られた、てのを考えちゃうのよ。まさかそんなことあるわけないとはわかってるんだけど。」 みくる「えっ・・・」 古泉「僕がそんな恐れ多いことをするわけないじゃぎゃッ!」 古泉よ、慌てすぎで舌噛むなんて入れ歯を装備したライオンより滑稽だぞ。 ハルヒ「てなわけで古泉くん。悪いんだけど今日だけ副団長の活動停止を行うわ。帰って。明日からはいつも通りのあたしになるから。」 古泉「・・・わかりました。ではみなさんまた明日お会いしましょう。」 そういやあいつに落とし前をつけるのを忘れていた。明日にしよう。 さて古泉が帰ったから朝比奈さんでも誘ってトランプでも ハルヒ「ちょうどいいわ、キョン!ここらへんではっきりしてもらいましょうか!」 キョン「なにをだ」 ハルヒ「なにって・・その・・・あんたが誰を好きなのかを・・」 そんなことか。見れば朝比奈さんや読者中の少女も俺を見ている。ハルヒには悪いが速答させてもらう。 「俺は有希の彼氏だ。」 ―――完―――
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涼宮ハルヒの約束 「あんたさ、自分がこの地球でどれほどちっぽけな存在なのか、自覚したことある?」 いつだったか、お前はそう言った。 あの時お前の言ったとおり、俺は本当にちっぽけな存在だと思う。 長門や古泉や朝比奈さんのような特別な力なんて、生憎持ち合わせていないからな。 だがハルヒ、お前は違うだろう?お前はこの地球の中心といってもいいくらいの存在だろう? なのに、なぜだ。 涼宮ハルヒは、3年前に息を引き取った。 俺たち普通の人間と変わらず、ハルヒの死は突然に、そして静かにやってきたのだ。 ハルヒのことだ。 もし間違って死んでしまったりしても、きっとあいつの意味のわからん能力かなんかで生き返ってくるものだと俺は思っていた。 今死ぬことをハルヒは望んでいない。必ず生き返ることを望むはずだ。 三年前の俺は、そう確信していた。 だが、ハルヒは戻ってこなかった。 俺はハルヒの死を理解することなどできなかった。 安らかに眠るあいつの顔だって見た。冷たくなってしまったあいつの手だって握った。あいつの葬式にだって行った。墓参りにだって何度も行っている。 何度現実を突きつけられても、俺はまだわかっていない。 俺はハルヒが戻ってくることを信じてやまないのだ。 三年前、ハルヒが死んで、俺たちSOS団はバラバラになった。 朝比奈さんはハルヒが死んだ直後の病院で、泣きながら、しかししっかりとした口調で俺たちにこう告げた。 「涼宮さんが死ぬことは規定事項なのかどうか・・・私には、わかりません。・・・ 何も、わかりません・・・。 でも、一つだけわかることがあります・・・。未来に帰らなければいけないのは、今、ということです。 短い間でしたが・・・本当にありがとうございました。皆さんに会えてよかったです、本当に・・・。 もう会えないかもしれないけど・・・」 涙で詰まったのか、朝比奈さんは一度うつむいた。そして顔をあげ、少し無理矢理な笑顔を作り、 「さようなら」 まっすぐ俺の顔を見ながら言った。 朝比奈さんは、薄暗い病院の廊下をゆっくりと歩いて行った。小さく震えている背中を見届けながら、俺たちは何も言えずにいた。 何か言うべきだったのかもしれないな。だけど、その時の俺の頭には言葉なんてものは存在してなかったように思う。 古泉はハルヒの葬式が終わった後、 「・・・とても残念です。残念としか、言い様がありません。私たち機関はもう能力を使うことはないでしょう。 使いたくても使えない。涼宮さんが居なければ、私たちはこんなにも無力なのですね。何が超能力者だ・・・と。」 長門以上に無言を貫く俺に、古泉は喋り続けた。いつもより力なく、いつものようにうざったいアクションをつけながら。 「機関は解散しますが・・・僕にはやらなくてはならないことがたくさんあります。 ・・・後始末、とでも言いましょうか。」 お別れですね、と寂しげな笑顔を見せながら俺に言うと、どこからともなく黒い車が古泉を迎えにきた。古泉も俺も、お互いに手を振ることのないサヨナラだった。 どこへ行ったのか、後始末とは何なのか・・・俺は何も知らない。あの日以来、俺は古泉に会っていない。 長門はというと、ハルヒが死んだ日以来顔を合わせていない。葬式に顔を出さなかった長門を俺は不審に思い、その帰りに長門の家に寄ったのだが、部屋は既に蛻の殻となっていた。 あいつも、情報統合思念体とやらのところに帰ってしまったのだろうか。 そうして俺は一人になった。 高校を卒業し、今は大学生だ。普通レベルの大学に合格し、一人暮らしをしながら普通の毎日を送っている。 ハルヒと出会う前のような、フツーの日常を。 友達だってそれなりに居るし、今、彼女だって居る。傍から見れば充実した毎日を送っている。 でもな、ちっとも楽しくなんてないんだよ。 朝比奈さん、長門、古泉・・・そしてハルヒ。 お前らが居ない毎日が楽しいわけなんてないだろうが。 一日たりともお前らを忘れた日なんてないさ。 こんな日常・・・あまりにも普通すぎて、一人で不思議探索にでも出かけたくなるほどなんだ、ハルヒよ。 寂しいじゃねーか。 俺を一人にしないでくれよ、ハルヒ。 お願いだ。 戻ってきてくれよ、ハルヒ―――。 静かな部屋に、携帯のバイブ音が響く。 一人物思いに耽っていた俺は、その音にびっくりし体を一瞬震わせた。 急いで携帯を取ると、画面には彼女の名前と番号が表示されていた。 「ああ、俺だ。どうした?」 『ねぇ。もちろん明日、空いてるわよね?ちょうど休みだし』 「明日?・・・ああ、別に用事はないが。明日がどうかしたのか?」 『・・・冗談でしょ?覚えてないの?明日は半年記念日じゃない』 「ああ・・・明日で半年だったか、すまないな」 『・・・記念日、覚えてくれてたことなかったよね・・・』 「・・・すまん」 『・・・まぁいいわよ。半年記念日前に喧嘩なんてしたくないもの。』 「ああ・・・すまんな。・・・明日はどうする?」 『キョンの家、駄目かな?』 「ああ、そうしよう。午後、適当に来てくれよ。じゃあな。」 電話を切り、俺はため息をついた。 明日で彼女に告白をされて始まった交際も半年になる。 断る理由が特に無かったから付き合っただけで、別に俺には好きという感情がなかったりする。 彼女はしょっちゅう俺に会いたいと言う。きっと彼女の方は俺の事を愛してくれているのだろう。 でも、俺が彼女に会いたいと思う時は、俺の中の男が女を求めた時だ。 我ながら最低だと思う。 ハルヒだったらこんな俺になんて言うだろうか。 引っ叩かれる・・・いや、それどころじゃ済まないだろうな。 俺は不意にカレンダーを見た。 今日は7月6日、明日は7月7日だった。 七夕・・・か。 次の日、午後2時過ぎに呼び鈴が鳴った。彼女だ。 「おじゃましまーす」 「ああ、ちょっと散らかってるけど気にしないでくれ」 俺がそう言うと、これのどこがちょっとなのよ、とぶつぶつ言いながら彼女は部屋を整理し始めた。 あんまり動かしてほしく無い気もするのだがな、片付けるのは確かに面倒なので俺はしばらく何も言わないでいた。 彼女の片づけている手が男の秘密ゾーンに伸び始めたところで声をかけ、片づけを中断させる。 そうすると彼女は思い出したような表情をし、カバンをがさごそとあさりはじめた。 「はいキョン!この本、読みたがってたじゃない?今日寄った本屋でたまたま見かけたから買ったのよ。」 「おお、ありがとうな」 「読んだらあたしにも貸してよね」 本を受け取ると、彼女はゆっくりと俺の体に腕を絡ませる。 俺たちはその状態のまま少し他愛の無い話をしていたが、しばらくすると彼女の唇が 近づいてきたので、俺はそれに答えようと本を置いた。 ―――その時、本からしおりのようなものがハラっと落ちた。 しおり・・・ まさか、長門か? 「待った!」 「わっ!!何!?」 少し大きな声を出し、彼女の体を強引に剥がすと俺は急いでしおりを拾った。 ぶつくさ文句を言っている彼女を尻目に、俺の目はしおりに書かれた綺麗な明朝体を 認識する。 あの公園で待っている 長門だ。 こんなやり方は長門しかありえない。 長門に違いない。そう思いたいのだ。ただの偶然のいたずらなら暴れるぞ。 とにかく、これは長門からのメッセージであり、あの公園とはあの公園だ。 俺の脳裏に、ハルヒがよぎる。 「なによ・・・どうしたの?なにそれ」 「すまん、たった今用事ができた」 「はあ?ちょっと何言って・・・」 「悪い、埋め合わせは今度する!家を出なくては」 「ちょっと、何よわけがわからないわよ!」 彼女の荷物を拾い、強引に手を引いて家を出る。わけがわからないであろう彼女は懸命に俺を引きとめようとするが、湧き上がる感情でいっぱいだった俺は、彼女が納得できるような上手い理由を考えることなどできるわけがなく、そのまま自転車に飛び乗る。 終いにはものすごい剣幕で怒鳴ってきた彼女に、俺は「本ありがとう」とだけ告げ、 ものすごい馬力でペダルをこぎ始めた。 一人暮らしをしている今、あの公園はそんなに近くなく、三駅ほど離れていた。だが、電車を待つ時間は今の俺にとって普段の100万倍増しに苦痛だったからな。 今までこんなに早く自転車を飛ばしたことがあっただろうか。 ペダルの回転が速すぎて足が空回りしそうになりつつ、俺は公園の入り口を急カーブで突っ切る。 ベンチに目をやる。 そこには、紛れもない長門の姿があった。 あまり変わってはいないが、少し大人びたように見える長門が俺を待っていた。 「・・・長門ッ!!」 俺は半ば転ぶようにして自転車から降り、荒い息で長門の名を叫ぶ。 「・・・久しぶり」 そんな俺の叫びにも動じない、三年前と何も変わらない淡々とした声。そして三年前と何も変わらない深海を切り取ったかのような瞳が俺を見つめる。 俺はなんだかひどく安心し、そしてひどく懐かしさに襲われた。不覚にも涙が出そうになる。 「長門・・・お前・・・今までどこで何してたんだよ」 「言語化できない。それより、私は今あなたに話したいことがある。だからここへあなたを呼んだ。」 「おう、なんだ?」 長門は淡々と続ける。 「異空通達情報振動が観測された」 「なんだそれは。ハルヒか?」 「そう。地球でも宇宙でもない場所からの涼宮ハルヒの意思情報振動が宇宙で観測された。その振動はもうすぐ地球にも到達する」 「どういうことだ!?もっとわかりやすく説明してくれ!ハルヒが戻ってくるのか!?」 俺は今ほど長門の難しい言葉と俺の簡単な構造をした頭に腹が立ったことはないだろ う。長門の難しい言葉を理解できるのは古泉ぐらいだろうけどな。 長門は続ける。 「宇宙では涼宮ハルヒの意思情報しか観測されなかった。しかし彼女が暮らしていた地球でなら意思を具現化しやすい。宇宙よりより明確な異空通達情報振動が観測できる可能性がある。 私はそれを調査しに地球へと戻ってきた。でも、異空通達情報振動が観測されたということをあなたに伝える判断を下したのは私の意思」 「なんなんだよ、その異空なんたら情報振動ってのは」 「簡単に表すとするならば、メッセージ、と呼ばれるようなもの。しかし、宇宙で観測された異空通達情報振動は言語化することはできない。」 ・・・つまり、俺の簡単な構造をした頭で解釈してみると、ハルヒメッセージがどこか異世界から発信され、それがもうすぐ地球にも伝わる、ということだろう。 「わかった。じゃあ地球でなら、ハルヒのそのなんたら振動も俺が理解できるものになってる可能性がある、ということなんだな?」 「そう。そして、その異空通達情報振動は、あなたへ向けて発信された可能性が高いとされている」 涙が出そうになる。 ・・・俺をどこか遠いところから見ていてくれていたのか? そして、俺にどんなメッセージがあるというのだ。 ハルヒ。 「到達は、今日の夜頃になると予測されている。しかしどんな形であなたに伝わるのかは予測できていない。そしてそれがあなたに理解できるものなのかは保障できない」 「ああ、それでもいいさ。俺は待ってみる」 「そう」 「ああ。」 そして沈黙。 その沈黙を利用して、俺は気持ちを落ち着かせる。 心臓がうるさい、ええい黙れ。落ち着いて考えるんだ。俺。 いや、なれるか。俺はずっとずっとハルヒを待っていたんだ。なれるはずがない。 「・・・ありがとう、長門。」 「・・・いい。私は、しばらくは三年前利用していたマンションで調査をする。」 「わかった。・・・じゃあ、また会えるんだよな?・・・長門」 まっすぐに俺を見ていた長門の目が、ほんのわずかだが揺らいだような気がした 「・・・会える。私という個体は、あなたに会うことを楽しみとしていた。そして、今ここで再会することができて嬉しく思っている」 「ああ、俺もだよ長門。」 ああ、俺は今相当普通じゃないんだろうな。 長門の目が、ほんの少し潤んだような気さえした。 「じゃあ、今日は帰るよ。また明日、お前に会いに行くよ。話したいことがいっぱいあるし、お前がどうしていたのかも聴きたいからな。 ただ、今俺の頭は爆発寸前なほどやばいみたいだ。一人になって頭の中整理してみるよ」 「そう」 「ああ。本当にありがとうな、長門。」 長門の頭を撫でてやる。なんだか、今のこいつを見ていたら無償にそうしてやりたくなった。 「・・・・・・・・・じゃあ」 「ああ、また明日な。」 長門はなんだか機械的に背中を向ける。俺は長門の背中が見えなくなってから、乱暴に放置していた自転車を持ち上げた。 少しずつ日が暮れる。 俺は家で一人、窓の外を見ながらぼんやり思い出に浸っていた。 一つ一つ思い出していたんだ。SOS団で過ごした毎日を。 何度も繰り返し頭の中で再生した変わることのない映像も、なんだか今日は違ったものに思えた。 あんなことも、こんなこともあったよな。そうして一つ一つ思い出しているうちに、少しずつ視界がぼやけていく。 ・・・くそ、今日はなんだか涙腺が緩いみたいだな。 俺の頬を冷たい水が伝う。 最近はやっと涙を流す回数が減ってきたっていうのに。 お前が今、すごく近くに居るような気がしてならないんだよ、ハルヒ。 一粒、また一粒と目からこぼれていく。 俺はお前に会いたい。 そして、あの頃は素直になれず、気づくことのできなかった気持ちを、お前に伝えたいんだ。 俺は――――・・・ その時だった。 俺の頬に、暖かく懐かしい、そしてこの世で一番愛しく感じられるような手が添えられた。 ゆっくりと優しく俺の涙を拭う。 ―――俺の目の前に今、確かにハルヒが居る。 「・・・もう、泣かないの。バカキョン」 ハルヒは俺の涙を優しく拭い続け、そっと笑った。 「・・・ハルヒ・・・」 「キョン・・・会いたかったの・・・ずっと・・・ずっとキョンに・・・」 ハルヒは、あの頃と何も変わらない姿でそこに居た。しかし、俺の記憶に残っているどんなハルヒの笑顔よりも穏やかに笑っていた。 「ごめんね・・・突然居なくなったりして。・・・あたし、ずっとアンタを苦しめてたのね。・・・あたし、普通の人間なんかじゃなかったのにね。死んでから知ったわよ。 それなのに、あたしあっさり死んだりして、あんたを苦しめたりして・・・」 「ハルヒ・・・俺・・・」 言いたいことや言わなければならないことがたくさん俺の喉へと上ってきて、言葉にならない。上手く言語化できない、とはこのことだな。 ふっ、と小さく笑いを漏らすと、今度は1000万アンペアの輝きを持つ笑顔を見せた。 「いいのよキョン!わかってる。アンタのことなんて全部わかってるんだから!・・・本当よ?」 「ハルヒ・・・俺ずっと・・・ずっとハルヒに・・・」 だめだ。涙で詰まって声さえ出すのが難しくなってきた。 俺はしばらく自分を落ち着かせようと必死になっていた。そんな俺を、ハルヒはとても優しい目で待っていてくれた。 反則だろ。泣き止めるわけないじゃねぇか、こんな状況。 やっとのことで喋れる状態になり、今度は俺がハルヒの頬にそっと手を添える。 すると、今度はハルヒの大きな目から涙がこぼれた。 バカハルヒ。同じように涙を拭ってやる。 そして、大きく深呼吸をする。 「ハルヒ・・・ずっとお前に会いたかった・・・俺はずっと・・・きっと初めて会った日から・・・」 俺は、 ずっとハルヒに伝えたかった言葉を今――― 「好きだ」 そうはっきり告げて唇を重ねる。 あの時、閉鎖空間でキスした時よりも、きっと俺は、その、色々と上手くなっているはずだった。大人のキスのやり方だって知っている。 なのになんでだろうな・・・俺はあの時のように、不器用に唇をぶつけることしかできなかった。 でも、なんでもよかった。そんなことどうでもよかったんだ。 俺の腕の中に、今確かにハルヒが居る。 ずっと会いたかった、ずっと待ち続けた、誰よりも愛おしいハルヒが居るんだ。 今、ここに確かに・・・ 唇を離す。 開かれたハルヒの目から、また一筋涙がこぼれる。 俺が拭う前に、ハルヒは自分で目をごしごしとやると、また穏やかに笑ってくれた。 俺もそれに答えて笑ってみせる。 そしてハルヒは笑顔のまま喋りだした。 「あのね・・・キョン。あたし、今はここの世界にずっと居ることはできないの」 俺は笑顔を一瞬にして保てなくなった。 それでも、ハルヒは続ける。 「でもね、大丈夫。あたしたちはまた会えるの。絶対よ。あたしは今ね、アンタとまた一緒になるために向こうで頑張ってるのよ。 何をしてるのとか、向こうってどこなのかとか・・・それは、うん、そうね。また会えたときにゆっくりたっぷり話すからさ」 「俺はお前とずっと一緒に居たい。もう置いていかないでくれ」 俺の言葉に、一瞬ハルヒは声を詰まらせる。 「・・・ごめんね。でも・・・ほんとに、また会える日がくるから・・・。あたしのこと、信じて・・・キョン」 また涙がこみあげそうになる。俺は顔を歪ませて必死に堪える。 「大丈夫だよ。アンタは今日、ここであたしへの気持ちを忘れるから」 「忘れるわけないだろうが。何言ってるんだ」 「あたし、今この世界では一つしか力が使えないのよね・・・。その力で、アンタのあたしに対する恋愛感情を消すの」 俺はハルヒが言い切る前に力強く抱きしめた。もうまともに顔が見れねぇ。何を言ってやがるんだ、こいつは。 「だめだ。ばかなことはやめろ」 「大丈夫よ。あたしと過ごした記憶は消えたりしないわ。ただ、今までみたいに苦しませたりしないから・・・」 「お前が好きなんだ」 「キョン・・・」 ハルヒが俺から離れる。 「あたし・・・そろそろ、行かなくちゃ」 「・・・ハルヒ・・・ッ」 ハルヒの体が一瞬透ける。 堪えていた涙が、堤防を破壊して一気に流れ出す。 「キョン・・・あたしも・・・アンタのことが好き・・・。それはずっと変わらないから。ずっと・・・永遠に」 ハルヒがどんどん薄れていく。耐え切れず俺は、ハルヒの両手をぎゅっと握り締める。ハルヒはそれに答え、俺と指を絡ませた。 「ハルヒ!」 「キョン、大丈夫よ!アンタは幸せになれる。今まで辛い思いしてた分、ちゃんと笑って暮らせる未来があるんだから。 そして、あたしたちはまた会えるの。約束するわ。あたしのこと・・・信じて」 ハルヒの笑顔が、消えていく――― 「さよなら、またね、キョン。・・・ありがとう」 ―――・・・ ハルヒが死んで5年。 そして、ハルヒと再会してから2年が経った。 俺は21歳を迎える。 そして、今長門と一緒に居る。 長門と、そして長門と共にある新しい命と一緒に、だ。 出産はもう間近だ。その時に備えて、今俺達は二人病室に居る。 あれから、ハルヒと再会してから、長門は普通の人間になることができたという。 そして俺たちは毎日のように会い、そして今、こうして二人で暮らしている。結婚式は2ヶ月前にしたばかりだ。 結婚式には、なんと古泉や朝比奈さんまで来てくれた。古泉も朝比奈さんも多くを語ってはくれないが、今は月に一度程度、4人で顔を合わせている。 きっと二人もハルヒに会ったのだろう。 俺は幸せだった。 長門が居て、古泉や朝比奈さんも居て。 ハルヒが言ったちゃんと笑って暮らせる未来が、今ここにあった。 ただ、ハルヒが居ない。それが足りないだけだった。 「・・・今日は、七夕だな」 今まで沈黙を続けていた病室で、俺はつぶやいた。 長門はふいに、ゆっくりと顔をあげる。そしてそのままゆっくりとカーテンを指差した。 「・・・空」 「・・・?・・・なんだ、天の川でも出てるのか?今日は晴天だったが・・・」 こんな所じゃ天の川なんて拝める程の星は見えないぞ、そう言い掛けながら俺はカーテンを開けた。 そこには、無数の星。 天の川ではない。その星達は、綺麗な幾何学模様を作り上げていた。 「・・・これは・・・」 呆気に取られる俺に、長門はぽつり、と言った。 「『私は、そこに居る』」 その言葉の意味を、俺は一瞬で理解した。 実はな。 俺はやっぱり最低な男みたいだ。 あれから・・・ハルヒと再会した時から、俺の気持ちは変わったりしていない。 今でも俺はハルヒのことが好きだ。 いや、もちろん長門のことだって同じくらい愛しているさ。 あの時、ハルヒは俺からハルヒへの想いを消さなかったってことだ。 何でかって? それは、長門が人間になることができたことを思えば、答えは簡単に出る。 俺は今最高に幸せだ。 ハルヒが言ったように、俺はちゃんと幸せになれたんだ。 ハルヒが嘘をついたり、約束を破ったりすることなんて一度も無い。 あいつは全て有言実行する奴だからな。 そう、 だから今、 俺はあいつが言ったように、ハルヒと再会することができている。 もう7歳になる俺の娘。 俺と長門の子供だ。 黄色いカチューシャをつけて、今、テレビの前に座っている。 うさんくさい番組だ。あんなのをUFOなどと呼んで誰が信じるんだ。下手したら飛行機を画質の荒いビデオカメラで撮影したものの方が世間には受け入れられると思うぞ。 ばかばかしくてため息が出そうになう番組だが、俺はチャンネルを変えたりしない。 そして前言を撤回する。信じる奴だって居るんだよな。今ここで、熱心にテレビに食いついている俺の娘がその一人だ。 最初から最後まで「フィクションです」と言わんばかりのインチキ映像を見せられ、ようやく番組が終わったところで、ずっとテレビに向いていた顔が俺に向いた。 大きな目をぱちぱちと瞬きさせて、100万ワットの笑顔で俺に言うんだ。 「ねぇキョン、宇宙人って居ると思う?」 俺の答えは決まっている。
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ドワーフ。 レベル51。 ドワーフ自治領、ボルエハルトの領主。 歴戦の勇士。若い頃は迷宮都市でエルフの賢者トラザユーヤの従者を100年近くしていた(*1)。 ニナ執政官の知人。呪われた戦斧を使う。呪われた経緯は不明。 気難しく、大貴族相手でも気に入らない相手には頑として剣を鍛えるのを拒否する(*2)。 ドワーフ 人物
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キョン「よ、おはよう」 ハルヒ「おはよ!相変わらず朝から気合の入ってない顔してるわねえ」 キョン「普通の朝はこれが標準なんだよ」 朝倉「あらキョン君、おはよう。今日も元気そうね」 キョン「あ、ああ。おはよう」 ハルヒ(フン!イヤなヤツがきたわ。外ヅラはかわいい顔してるけど、 腹の中じゃなに考えてるかわかったもんじゃないわね。この前 私の体操服が盗られたことだって、きっとコイツの仕業に違いないわ) 朝倉「あれ、涼宮さんどうしたの?急に静かになっちゃって。気分でも悪いの?」 ハルヒ(ええそうよ。あんたのせいでね!) キョン「朝倉、コイツの面倒はオレが見るから大丈夫だ」 そういうと朝倉は目をうっすら細くして答えた。 朝倉「あらそう?じゃ、キョン君にお願いするわ」 そういうと朝倉は女子の輪の中へ戻っていった。 キョン「おいハルヒ、朝倉のことがあんまり好きじゃないのは見ててわかるんだが、 せめて朝のあいさつぐらいしたらどうだ?一応委員長だしな」 ハルヒ「関係ないわ。私はね、アイツみたいに狸の皮をかぶって本性を隠してるようなヤツが 大嫌いなのよ!有希が言ってたけど、中学時代のアイツは今から想像できないくらい 荒れてたらしいわよ。アイツ高校に入ってからずっと猫かぶりっぱなしよ」 キョン「その話が本当だとしてもだ。あいさつぐらいは別にかまわんじゃないか。 それにお前は本性を現しすぎなんだよ。もうちょっとおしとやかにしてみろ。 きっと朝倉くらい人気が出ると思うぞ」 ハルヒ「フン!アホくさい。それに前言ったでしょ!アイツ私の体操服を」 キョン「しっ!・・その話は言わないっていったろ。朝倉がやったっていう確証がないんだ。 それに今お前が朝倉とおおっぴらに対立したら、ますますクラスで孤立することになるんだぞ?」 キョンは大きくため息をついた。 キョン(なんだってコイツは社交性が皆無なんだ?) 2時間目は体育だった。女子は体育館でバスケットボール、 男子はグラウンドでトラック競技である。 キョン(ハルヒのヤツ、朝倉とケンカしなきゃいいんだが・・・) 谷口「ようキョン、どうした?恋煩いか?」 キョン「ドアホ、・・・なんでもねえよ」 谷口「ははあ・・・お前、もしかして涼宮のこと考えてたな」 キョン(ドキッ) 谷口「お前は考えてることがすぐ顔に出るからな・・・ 今朝の涼宮と朝倉、一触即発だったじゃねえか」 キョン「な、なんでそんなことお前に・・」 谷口「バーカ、よく見てりゃそんぐらいわかるんだよ。涼宮が朝倉をにらむ目は ハンパじゃねえからな」 キョン(・・・・・・) 谷口「でも朝倉と対立するのはよくねえな・・・アイツは1年のアイドルとして 名前が知られちゃいるが、本性はなかなか黒い性格してるってウワサだからな」 キョン「それ、本当か?」 谷口「ああ。朝倉と同じ中学出身のヤツに聞いたんだが、中3のときアイツと ケンカした女子がいたらしいんだ。理由まではわからんがな。 そしたら次の日から、おそらく朝倉の命令だろうな。その女子が徹底的に 無視され始めたんだとさ。かわいそうに、その子は一週間あまりで 登校拒否になったらしい」 キョン「・・・マジかよ」 谷口「さあな。オレが真相を確かめたわけじゃないから断言はできんが、 ともかく朝倉だけは敵に回さないほうがよさそうだぜ。涼宮には お前からよく言って聞かせとけよ」 キョン「・・・一応、忠告として受け取っておくよ」 一方そのころ、体育館では・・・ 現在、ハルヒ率いる赤チームと朝倉率いる青チームの試合が行われていた。 別に二人がキャプテンをつとめているわけではないが、飛びぬけて 運動能力の高い両者は試合全般にかけて活躍し通しであった。 瀬能「涼宮さんて運動神経抜群ねえ」 阪中「そうよね。ちょっと憧れちゃうのよね」 瀬能「それに、朝倉さんもすごいよね。さっきから5回連続でシュート決めてるわ」 阪中「あの二人、あんなにすごいのに運動部入ってないのよね」 朝倉(涼宮さん、さっきから少し目障りね・・・) 朝倉はすっと目を細めてハルヒを見た。それからチームメイトに耳打ちをはじめた。 現在、オフェンスはハルヒチームである。ハルヒは華麗なドリブルで 敵ディフェンスの輪をかいくぐり、ゴール近くまで進んでいた。 ボールを奪いにきたディフェンスの一人がハルヒにすかされて 大きくバランスを崩し、派手に転んだときであった。 転んだと同時に朝倉はハルヒに体当たりをかけた。 ハルヒは大きく飛ばされ、床に倒れた。 ハルヒ「いったぁ・・・」 見るとハルヒはわき腹を痛めたのか、手を当てたまま動かなかった。 朝倉「涼宮さんッ!大丈夫!」 朝倉は大げさに声を上げると、ハルヒにかけよった。 朝倉「ごめんなさいね。ちょっと力が入りすぎてしまったの。さ、手を貸すわ」 ハルヒは一瞬朝倉を睨んだが、すぐに目をそらした。 ハルヒ「・・・いいわ。自分で立てるから」 朝倉「あらそう、それなら安心したわ」 そう言いながら、再び朝倉は目を細めた。 朝倉のタックルは、直前にころんだ女子のせいで審判の目が行き届かなかったらしく、 不問とされたようだった。 その後試合は、ハルヒがわき腹を痛めたせいで思ったように攻撃ができず、 防戦一方となった。 結果的には、朝倉チームにかなりの得点差をつけられた末、ハルヒチームは敗れた。 朝倉「まったく、うまいことやってくれたわね」 鈴木「アンタのタックルもかなりえげつなかったわよ?涼宮のヤツ、 かなり痛そうにしてたわね。骨にヒビでも入ったんじゃない?」 朝倉「そのときはね、お見舞いにでも行ってあげたらいいのよ」 女子A「キャハハハ!涼宮かわいそー!」 2限終了後、朝倉たちは水のみ場で、えらくわかりやすい悪事の解説を行っていた。 長門「・・・・・そこ、使っていい?」 朝倉「あら?長門さんじゃない。こんなところに何の用?」 長門「次の時間は書道。水を汲みにきた」 朝倉「ふーん・・・あ、そうそう。あなたのサークルの団長さんね、さっきの体育の時間に ケガしちゃったみたいなの。私が心配してたって後で伝えといてちょうだい」 長門「・・・そう」 水を汲み終わった長門はすぐに教室に帰っていった。 朝倉「あいかわらず愛想のない子ねえ・・・」 鈴木「なに?あの陰気なヤツ」 朝倉「私の幼馴染よ。無表情な子だから何考えてるのかよくわからないの」 女子A「涼子、あんなのとつるんでたの?」 朝倉「ま、腐れ縁てヤツね。住んでる場所も同じマンションだし」 鈴木「・・・ふーん。アンタとは全然性格あわなさそうね」 キョン(次は数学か・・・ま、授業を聞くだけ無駄だな。それにしても、 体育が終わってからのハルヒはいつに増して不機嫌そうな顔してるな。 まさか朝倉とケンカしたんじゃ・・・) キョン「おいハルヒどうしたんだ?浮かない顔して、具合でも悪いのか?」 ハルヒ「なんでもないわ。ちょっとわき腹を痛めただけよ」 キョン「運動神経のいいお前がケガしたのか。めずらしいこともあるもんだ。 保健室には行ったのか?」 ハルヒ「たいしたことないわ。ほっときゃすぐに治るわよ」 その後ハルヒは、昼休みまでずっと不機嫌オーラを放ち続けていた。 昼休みになると、すぐに教室を出て行った。 谷口「おいキョン、どうやら2限の体育でひと悶着あったらしいぞ」 キョン「まさか、ハルヒと朝倉がケンカしたのか?そういやアイツ 体育が終わってからずっと不機嫌だったしな」 谷口「いや、ケンカってワケじゃないみたいだが、朝倉と涼宮が接触プレーしたらしいんだ」 キョン(それでアイツ、わき腹を痛めたって言ってたのか) 谷口「その接触プレーだがな。ただのハプニングじゃないらしいぞ」 キョン「どういうことだ?」 谷口「真相は不明だが、その接触プレーは朝倉が仕組んだってウワサが流れてるんだ」 キョン「おい、そりゃ本当か!」 谷口「だからウワサだって。しかし涼宮にとっちゃ、あまり状況はよくないみたいだな」 キョン(たしかに今のままでは、近いうちに大きな衝突が起きることは 火を見るより明らかだ。それにウワサが本当だとすれば、ハルヒに非はない。 一体どうすれば・・・) 谷口「ま、お前もそろそろ真剣に考えたほうがいいぞ。手遅れにならないうちにな」 なぜかこのクラスでは、オレはハルヒのお目付け役というポジションに付けられているようだ。 それというのも、オレたちが高校に入学して間もないころに、 オレはハルヒがでっちあげたSOS団などというオカルトサークルに 強制的に加入されられたからだ。 それ以来、オレは社交性0のハルヒとクラスとのパイプ役を勤めているってわけだ。 弁当を食い終わるとオレは文芸部部室に向かった。 ……表向きは文芸部であるが、その実体はハルヒが作ったSOS団などという わけのわからないサークルの巣窟となっている。 オレは部室のドアを開けると、中にいた少女に声をかけた。 キョン「よ、長門。いつもご苦労なこったな」 長門は奥の机でハードカバーの本を読んでいた。彼女はただ一人の文芸部員であったが、 ハルヒに目を付けられたのが運のつきであった。それ以来ハルヒがこの部室に居座るようになり、 文芸部は今や有名無実化していた。・・・まあ、長門にしてみればハルヒがいてもいなくても 読書できることに変わりはないのであろう。 キョン「ちょっと聞きたいことがあるんだ」 そういうと長門は本を閉じ、オレに視線を移した。 長門「なに?」 キョン「朝倉涼子・・・って知ってるだろ」 長門「私の幼馴染」 キョン「その朝倉について、詳しく教えてもらいたいんだ」 長門「なぜ?」 そういいながら長門はまっすぐにオレの目を見つめてくる。・・・うーん、なんだか居心地が悪いな。 キョン「その、うまく言えないんだが、ハルヒのヤツが朝倉と仲悪くてな。 どうにかして仲良くしてもらいたいと思ってるんだ」 長門「朝倉涼子と涼宮ハルヒの性格は水と油。仲良くするのは困難であるように思う」 それぐらいはオレにもわかるんだが。 キョン「うーん、そこをなんとかだな・・・そうそう、朝倉ってどんな性格してるんだ?」 長門「彼女の性格は表面に現れているものがすべてではない。常に本音を隠しながら 人と接している」 キョン「てことはだな。表面上は仲良く接しているように見えても、 実はソイツのことを嫌っているってこともあったりするのか?」 長門「今までの経験上、そういうことは多い」 やっぱりそうか・・・本性が黒いってウワサももしかしたら本当かもしれんな。 キョン「なんでそこまでわかるんだ?アイツはお前にだけは本音を話しているのか?」 長門「彼女は表面的には誰に対しても同じ接し方をする。・・・でも、私にはなんとなくわかる」 幼馴染だけに性格の深いとこまで理解してるってことか。 キョン「そうか・・・ありがとな、長門」 長門「気をつけて」 キョン「ん、なにがだ?」 長門「彼女は敵意を抱いた相手に、決して直接に敵意を見せるようなことはしない」 …なるほどな。こりゃハルヒでも手に負えないかもしれん。 結局その日はハルヒの機嫌が直ることはなかった。 次の日、ハルヒのことが心配だったオレは少し早めに学校に着いた。 朝倉「あら、キョン君おはよう」 キョン「あ、ああ。おはよう」 教室に入ると、なぜか朝倉がハルヒの机の上に腰かけていた。 キョン「なんでお前がハルヒの席にいるんだ?」 朝倉「あら、ちょっとぐらい貸してもらってもいいんじゃない?まだ涼宮さんきてないみたいだしね。 それより少しお話しない?」 キョン「それは別にかまわんが・・・」 オレは戸惑いつつも朝倉をの会話を楽しんでいた。しかし、やがてハルヒが 教室に来る時間となった。 ハルヒは自分の席に朝倉がいるのを一瞥すると、さっさと教室から出て行ってしまった。 朝倉「あれ、涼宮さんあわててどこ行ったのかな?トイレかな?」 キョン「・・・朝倉、お前に聞きたいことがある」 朝倉「なあに?」 彼女は目を細めて聞き返した。 キョン「お前、昨日の体育の時間にハルヒにケガさせたんだよな?」 朝倉「涼宮さんには悪いことしちゃったわね。・・・昨日から心配だったの」 キョン「そのことだがな・・・お前がわざとやったんじゃないかってウワサを聞いた。 まさかとは思うが念のため聞いておきたい。それは本当のことか?」 朝倉「・・・ひどいこというのね。私がクラスメートをわざとケガさせるように見えるの?」 朝倉は大げさに、心外だという身振りをしながらそういった。 心底、疑われたことが悲しいという表情をみせながら。 キョン「ウワサが気になったんでな。直接確認したかったんだ。・・・疑って悪かった」 朝倉「疑いが晴れたならそれでいいわ」 彼女はオレに満面の笑みを見せると、自分の席に戻っていった。 しばらくしてハルヒが戻ってくると、ほぼ同時に担任が教室に入ってきてHRとなった。 そして、1時間目の間中ずっとオレはハルヒの不機嫌オーラを背中で受け続けていた。 ハルヒ「あんた、委員長萌えだったの?」 キョン「なんのことだ?」 休み時間になると、さっそくハルヒはオレに喰ってかかってきた。 ハルヒ「さっき朝倉とうれしそうに話してたじゃないの」 キョン「別にうれしそうじゃねえよ」 ハルヒ「鼻の下伸ばしてたクセに何言ってんのよ。おかげで私が遅刻するとこだったのよ」 キョン「朝倉なんて気にせず教室に入ってきたらよかったんだよ」 ハルヒ「アイツの顔なんて見たくもないわ!」 キョン「お、おい、あんまりでかい声だすな。聞こえるだろ」 ハルヒ「知ったこっちゃないわよ!」 そういうとハルヒは、女子グループの輪の中心で微笑んでいる朝倉を睨んだ。 視線に気づいたのか、朝倉はハルヒのほうをチラっと見て、それからこのオレに 微笑みかけてきた。 ハルヒ「・・・ふーん、朝倉もまんざらじゃないみたいね。よかったじゃない!」 キョン「お前、なに勘違いしてるんだ?」 ハルヒ「フン!」 ハルヒは窓の外に目をやると、それ以上は口をきかなかった。 その後もダウナーなオーラを無差別に拡散するハルヒに耐えながら、なんとか午前の授業が終了した。 国木田「涼宮さん、今日も機嫌悪そうだったね。やっぱりウワサ本当だったのかな?」 キョン「さあな」 谷口「あの様子だとそろそろ全面戦争も近いぜ。・・・ところでお前、今朝朝倉と 仲良く話してなかったか?」 キョン「しらねーよ。向こうから話しかけてきただけだ」 谷口「涼宮を裏切ろうってのか?ま、お前がどっちにつこうが知ったこっちゃないが、 お前に見捨てられたら涼宮はこのクラスで孤立するってことは忘れるなよ」 キョン「人の話を聞かないヤツだな・・・そもそもハルヒが孤立してんのは、 アイツが自ら招いた事態じゃねえか」 谷口「あれでも中学のころに比べたらだいぶマシになってるんだぜ?・・・たしかに 朝倉がかわいいのは認めるが、安易な乗り換えはオレをはじめとする男子軍団が 黙っちゃいないぞ」 国木田「そうそう。キョンには涼宮さんがお似合いってことだよ」 勝手なことばかり言いやがって。涼宮にせよ朝倉にせよ、オレに選択権はないのか。 ……っと、こんなことコイツらに聞かれようもんなら公開処刑されかねんな。 教室で弁当を食い終わると、オレはまた部室へと向かった。 キョン「よ、長門・・・はいないみたいだな」 めずらしく今日は長門が来ていなかった。 やれやれ、ハルヒと朝倉のことを相談しようと思ったんだが。 オレはイスを引いて腰かけた。 しばらくすると部室をノックする音が聞こえた。 キョン「どうぞ、空いてますよ」 朝倉「ちょっとお邪魔するわね」 なんと、入ってきたのは朝倉だった。 キョン「こんなところまで何の用だ?・・・教室じゃ言えないようなことか?」 朝倉「あら、つれないこというのね。わざわざあなたに会いにきた女の子に対して」 朝倉は笑顔を崩さずに話を続けた。 朝倉「アナタ、長門さんに私のことを聞いたみたいね」 キョン「・・・長門がそう言ってたのか?」 朝倉「あの子はそんなおしゃべりじゃないわ。ただ昨日からのあなたを見てて そう思っただけ。影でこそこそされるのはあまり好きじゃないの」 えらくストレートにきたな。一瞬あっけにとられてしまった。 キョン「それは悪かった。じゃ、オレもストレートに言わせてもらうよ。 ・・・あまりハルヒを刺激しないでほしい」 朝倉「それこそ心外ね。私は涼宮さんと仲良くしたいと思ってるわ。 あの子、クラスで孤立気味だから・・・あなただけには心を開いてるようだけど?」 不意にそう言われて顔が赤くなってしまった。・・・コイツはなかなかの強敵だな。 オレの表情を見た朝倉は、満面の笑みで話を続けた。 今度はオレが朝倉を見つめる番だった。 朝倉「なあにキョン君?・・・そうね、もしかしたら私も彼女の気に障ることを してたのかもしれないわ。今後は気をつけるってことで、ここは納得してくれない?」 キョン「・・・わかった。くれぐれも頼む」 朝倉「あなたにここまで心配してもらえるなんて、なんだか涼宮さんがうらやましいわ。 じゃ、そろそろ私はこの辺で。あなたたちもほどほどに教室に戻るのよ?」 そういうと朝倉は教室へ帰っていった。 彼女が帰ったあと、オレは再びイスに座りなおして大きくため息をついた。 キョン「なあ長門、今の朝倉の言葉、どう思う?」 長門「なんで私に聞くの?」 キョン「いや、お前ならアイツが本心から言ったかどうかわかるかな、と思ってさ」 長門「あなたはわからないの?」 たしかに、アイツと付き合いの浅いオレでも今のセリフは本心から言ってないってことは なんとなくわかる。 しかし、今日の長門は妙に冷たい気がするな・・・ 長門「私はどちらの肩も持たない。だからあなたの味方はできない」 長門の言葉を聞いてオレは驚いた。長門がはっきりとした意思表示をするなんて、 かなりめずらしいことだからである。 ・・・まあ、考えてみればかたや幼馴染、かたやSOS団団長の揉め事だ。 どちらか片側につきたくない気持ちは察せられる。 キョン「すまなかったな長門。ま、相談ぐらいには乗ってくれよ」 そういうと長門は黙ってうなずいた。 2話
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なぜだ? いや、理由は分かるが予想外だ。 なぜだ? あれ?だって古泉も朝比奈さんも、さらに長門も大丈夫だって・・・ あれ? 今、俺の目線の先には、夕日に照らされ、だんだんと背中が小さくなっていくハルヒの姿が映っている。 先ほども述べたように予想外なことがおきた。 いや、ちょっと前の俺ならこれは予想できるレベルなんだ。 ただ、古泉や朝比奈さんや長門にも予想外なことが起きてしまったから俺は今困惑している。 多分、谷口や国木田に聞いても、その3人と同じ言葉をかえしてきたと思う。 なのに、なぜだ? 俺は今、北校の校門前で棒立ちになっている。 ハルヒは今、俺からかなり離れた坂の下で走っている。 えっと、俺が今考えなければいけないことは多分、明日からどうやってハルヒと接していくかということだ。 まあ、ハルヒにはさっき、今までと変わらずに・・・とか言われたんだが・・・ どちらにしろだ。俺がさっきやったことは、失敗に終わったわけで・・・ ああもういい、何があったかさっさと言っておこう。 俺は、俺は先ほど、 ハルヒに告白して振れらた。 次の日の上り坂はいつもよりかなりきつかった。 ちょっと誰かに前からつつかれたら、俺は下まで真っ逆さまで転がり落ちる自信がある。 とりあえず、俺が今考えなくちゃいけないのは、これからハルヒとどのように接していくかだ。 いや、今までと同じように、告白なんてなかったかのように接していくのがやはり一番いいような気はする。 しかしだ、悪いが俺にはそういうことができる自信がない。 現在の俺の心境は、けっこう辛いのだ。 心にポッカリ穴が開いたというのはこういう時に使うんだなというのがよく分かる。 もしかしたら、谷口あたりに聞けばいい答えがもらえるかもしれないな。 あいつなら、こういう経験何度もしてそうだし。 と思ったのだが、谷口よりも、ハルヒのほうが顔をあわすのは当たり前だ。 なんたって、俺の席の後ろの席なんだからな。 何か言うべきなのだろうか?それとも、何も言わずにするべきだろうか? 普段の俺はどうしてた? そうだ、いつもハルヒに話しかけてたじゃないか。 だが残念、今日の俺にはそういうことできそうにない。 と思っていたのだが、 「おはよっ!キョン!」 ハルヒのほうが俺に、挨拶をしてきた。 どことなく、無理して作った笑顔という感じで・・・ こいつも、もしかしたら俺と同じ心境なのかもな・・・ 今までよく一緒に行動していた相手に告白されて、そしてそれを振った相手とどう接していけばいいか・・・ 「ああ、おはよう」 とりあえず、俺も返事を返しておく。 自分でも分かるぐらい、元気のない声でな。 「今日も部活に来なさいよ!」 「ああ」 そういや、昔谷口が言ってただろうか? ハルヒは、告白されても、その場で振ることを知らないと。 っていうことは、俺が最初に告白してその場で振られた第1号というわけだ。 そうとうのショックだぞこれは。 そんなこんなで、俺とハルヒはまともに話さずに、どことなく気まずい一日を送った。 時は放課後。 俺は今、文芸部室のドアの前にいる。 ノックをする。朝比奈さんの「はぁい」という声が聞こえる。ドアを開ける。3人の顔を確認する。 ハルヒは掃除当番なため、まだ教室にいるはずだ。 ところで昼休みに、谷口に昨日のことを話したら、ざまあみろと言いたげな顔になっていた。 少しはいいアドバイスをくれると思った俺がアホだったか。 国木田はいろいろ、励ましてくれたようだが、 もう一度告白できるわけがねーだろうが! 古泉と目が合う。テーブルにはチェス盤。 どうせヒマなので、俺は古泉の向かいの席に座り、朝比奈さんからもらったお茶を受け取り、飲んだ。 「おや?思ったより元気がないですね。今日は笑顔で入ってくると思ったのですが・・・」 目の前の古泉が言う。 そういや、こいつらには話してなかったな。昨日のことを。 いろいろ、アドバイスしてくれたんだ。 言っておいたほうがいいだろう。 「ハルヒには振られたよ」 そう言ったとたん、ポーンを持っている古泉の手の動きが止まった。 いや、古泉だけではない、長門も朝比奈さんもだ。 しかも、3人とも目線は俺の顔。 まあ、こいつらも多分、俺と同じことを思ってるんだろうな。 なぜだ?・・・と。 「本当に、振られたのですか?」 「ああ」 「何かの間違いでは?」 「間違ってたのはお前らのほうだ」 そう言うと、古泉は何も言い返すことがなかった。 しばしの沈黙。 長門からの目線が痛い。 朝比奈さんはどこか、オドオドとしている感じだ。 俺は、先ほど朝比奈さんから受け取ったお茶を口につける。 いつもよりおいしく感じないのは俺の気のせいか? 沈黙を破ったのは古泉だ。 「できるなら、昨日のことを詳しく聞かせていただけませんか?」 まあしかたがない。 一応、昨日の告白は3人に協力してもらってやった行動なんだ。 あまり乗り気ではないが、喋ってやろう。 昨日の放課後、古泉はバイトと偽って先に帰り、朝比奈さんも用事があると偽って先に帰り、長門も(以下略) そんなわけで、部活終了時には俺とハルヒだけになった。 「なんか、あの3人って用事があるときかぶるわよねー」 とかハルヒが言っていたような気がする。 いや、はっきり言って、いまいち曖昧だ。 なんたって、その時の俺は、その後に取る行動のことで頭がいっぱいだったんだからな。 「じゃあ、あたし達も帰りましょうか」 「そうだな」 ちなみに、この時間、他の部活も終了時間であるにもかかわらず、校門にはほとんど人がいなかった。 それもそのはず、機関の協力があったからだ。 あまり、あいつに貸しを作りたくないんだが・・・。 まあいい、感謝しておこう。 時は夕方、日は傾きだし、坂の上から見下ろした町はオレンジ色に照らされていた。 こういう景色を見れる時だけ思う。 北校が、こんな坂の上でよかったなと。 その時のハルヒは、 「明後日の市内探索は遅れずに来なさいよ!」とか言ってたような気がする。 気がするというのは、先ほども言ったように次に取る行動のことを考えていたのと、ハルヒの後ろにいたということの二つの理由がある。 そして俺はさらに、ハルヒから少し距離をとり、 「ハルヒ!」 ハルヒの背中に向かって叫んだ。 ハルヒがこちらを振り向く。 夕日に照らされたそいつの顔は、この世にある言葉じゃ形容できないほど、キレイだったのを覚えている。 「お前と初めてであったとき、変な女だ、できるだけ近づかないほうがいい・・・俺はそう思っていた」 ハルヒは、何言いだすんだ急に?というような顔をしている。そりゃそうだろうな。 「でもな、今気づいたんだ、俺はそのときからハルヒを見ていた。モノクロ世界からカラーの世界になったような・・・」 ああもう、何が言いたいんだろうな俺は? しかも、心を落ち着かせるためにいろいろ台詞考えてきたが、逆に恥ずかしい。 ああ、もういい。 俺は、考えていた台詞を捨てて、ハルヒに言った。 「単刀直入に言わせてもらう」 その時、俺には回りの音なんて聞こえてなかった。 いや、実際なにも音はしてなかったのかもしれないけどな。 で、だ。俺は一度深呼吸して言ったわけよ。 「俺はお前が好きだ。俺と付き合ってくれないか?」・・・ってな。 このときの俺は、別に、OKされると思っていたわけじゃない。 だからといって、振られるとも思っていなかった。 いや、どちらかというと、OKしてもらえるという気持ちのほうが強かった。 そんな時に、 「ごめん」 ハルヒの声が聞こえてきた。 その時のハルヒの顔を俺は見ていない。 頭をさげて告白してしまったからな。 いや、それよりもだ。なんだったんだろうな? 心臓にグサッと何かが刺さったような感覚は。 おい、今なら朝倉出てきてもいいぞ!とか一瞬だけ思ったような気がする。 そういや、その時にカラスがとんでいるのを見たような気がする。 まあ、これがアニメなら、 「アホーアホー」とか言って鳴いてたかもしれないな。 そこまで説明して、俺はもう一度、朝比奈さんのお茶を飲んだ。 やっぱり、さっきよりぬるくなってるな。 にしても、ハルヒはまだやって来ない。 まあ、普通に掃除をやってたら、これぐらいの時間、別に遅くはないのだが、 それが、ハルヒだと別だ。 この時間になっても来ないのは遅い。 あいつも、俺と顔を合わすのが気まずいような気がしてるのかもな。 それから、俺がポーンを動かすと、 「それだけですか?」 古泉が訊ねてきた。 それまでもなにも、振られるまでの仮定を聞きたかったんだろうが。 俺の話は以上だ。 「その後の話を聞きたいのですが・・・そうですね、たとえばなぜ涼宮さんはあなたを振ったとか言ってませんでしたか?」 ん?そうだな・・・ そういや言ってたな・・・ とりあえず、もう一度俺は、昨日のことをを回想しながら、話し出した。 俺はハルヒに振られ、呆然と立ち尽くしていた。 一応、俺は聞いた。 「何で?」 そこから、2拍ほどの空きがあって、 「あたし、キョンよりも好きな人がいるの」 ハルヒはそう言った。 「あんたが、いきなりこんなこと言い出してビックリしたけど、その・・・今の、なかったことにしよ!明日からも普段どおりに」 そんな無茶なことができるかよ・・・ 長門に頼めば、記憶が消せるかもしれないが。 「あっ!そうだ、あたしも用事があるんだった。じゃあ、先に帰るね!」 そう言って、ハルヒは走り出した。 俺は、呆然と立ち尽くしていた。 そこからは、冒頭通りだ。 にしても、あいつの好きな人ってどんな人だろうな? そういや、前に言ってたか? 付き合うなら宇宙人、もしくはそれに準ずる何か・・・ってね。 まだ、あいつはそんな人間だったか。 あいつをはじめてみたときからと、今のあいつはかなり変わってると思ったんだがな。 「おかしい」 これを言ったのは、先ほどから電池を充電中のロボットのように止まっている長門だ。 何がおかしいって? 「涼宮ハルヒの恋愛感情と呼ばれるものはいつもあなたにむいている・・・」 それは、お前にアドバイスしてもらってるときにも聞いた。 だけど、違うんだよ。 あいつはやっぱり、宇宙人とかそんなのがいいんだ。 俺はあいつとはつりあわないほど、普通すぎだ。 「もしかしたら、涼宮さんの言ってることは嘘だったのかもしれませんよ」 古泉が言う。 「何のために、嘘をつくんだ?」 「たとえば・・・」 そして、一瞬古泉は視線を長門のほうにむけ、もう一度俺の顔を見て、 「あなたは、僕と付き合ったほうがあっていると考えたとかね」 何だそれは気色悪い。 それはお前の願望だろうがバカやろう。 「冗談です」 そうだとは思ったさ。 でもまあ、少しは気分がマシになったかな? 「悪いがみんな、ハルヒの前では今までどおり普通にいてくれ。俺から何も聞いてないフリを貫き通してくれ」 「それが一番いいでしょう。涼宮さん自身も、今までどおりがいいと考えてそうですし」 それから数分後、いつものようにドアが勢いよく開き、 「やっほー!」 とか言いながら、ハルヒが登場した。 それからはいつもどおりだ。 俺と古泉はいつもどおりチェスをやって、俺の圧勝。 朝比奈さんは、パソコンに慣れてきたらしく、お茶に関するサイトを見ていた。 ハルヒはいつものようにネットサーフィン。 ただ、長門は時折、こちらを見ていたように思われる。 長門が本を閉じる音が聞こえた 「よーし、じゃあ今日はこれにて解散!明日は市内探索だからね!みんな遅れないように。特にキョン!遅刻したら罰金よ」 遅刻しなくても罰金だけどな。 と思いながら、俺は帰路についた。 ところで、普段なってほしいと思っていて、たまたまなってほしくないと思ったときにかぎってなってしまうことがある。 どういうことだ、なんて別にいい。 いや、ただたんにあれだ。 市内探索の午前の相手がハルヒになってしまっただけだ。 ハルヒと二人だけのペアは久々かもしれないな。 さて、俺はどうすればいいのだろう? まあ、別に考えていない。 ハルヒについていくだけだ。 「………」 「………」 「………」 「………」 ハルヒと二人っきりの状況でこんなに無言がつづくのは久々・・・いや、初めてかもしれないな。 ちなみに、俺たちが今歩いているのは、いろいろな衣料品店がある街だ。 先ほどから、いろんなショーウインドーが俺たちの左右に存在する。 にしても、最近マネキンの顔がなくなってきている。 理由は簡単、金がかかるからだ。 まあ、俺にとっちゃあどうでもいいんだがな。 と思っていると、ハルヒが何か呟き、幽霊のように歩いて、そのままショーウインドーにぶつかった。 おいおい、大丈夫か?ハルヒ。 「ごめん、ちょっとボーっとしてた。さあ、不思議を探しに行くわよ!もしかしたら近くにあたしを操った超能力者がいるかもしれないわ!」 そう言って、ハルヒは俺を置いて歩き出した。 俺は、ハルヒがぶつかったショーウインドーを見た。 そこには、俺が映っていた。 皮肉なことだ。長門の言ってたことは間違っていなかったらしい。 ハルヒは先ほどこう呟いた。 「ジョン?」 午後のメンバーは幸いなことに、ハルヒと一緒になることはなかった。 ハルヒは朝比奈さんを連れてどこかへ行く。 つまり俺は、古泉と長門と一緒だ。 俺と古泉はとくに行きたいところはないので、長門を先頭にして、どこかへ向かっている。 まあ、図書館だろうな。 「ところで、午前中は何をしていたのですか?」 横にいる古泉がそんなことを言い出した。 「ああ、いや、多分だけどな・・・ハルヒが好きな人が分かった」 古泉は笑顔の中にどこか驚いた顔をしている。 長門は先ほどと変わらない歩調で歩いている。聞こえているとは思うんだがな。 「興味がありますね、それは。是非教えてくださいませんか?」 「それは機関の一員だから言ってるのか?それとも、一人の人間として言ってるのか?」 「もちろん、後者ですよ。僕が機関に所属して無くても同じことを言っていたでしょう。まあ、機関には報告するかもしれませんが・・・」 こいつは聞きたいのか聞きたくないのかどっちなんだ・・・ 無駄な言葉が多いとは思っていたが、お前が損するようなことを言ったぞ。 まあいい、 「ハルヒが好きなのは、ジョン・スミスだ」 古泉は少し、普段と比べてだが、ポカーンとした顔になった。 まあ、誰か知らないからあたりまえだ。 長門はジョンが俺だということを知ってるのか、少し歩調が短くなった。 「あなたは、それが誰か知ってるのですか?」 「ああ」 古泉はそれ以上、何か言うことはなかった。 まあ、いざとなったら機関がてっていして調べることぐらい簡単だと考えたのか、それともこれ以上聞いても無駄だと思ったのか。どちらでもないのか。 俺にしてみりゃどれでもいい。 とか考えていると、急に止まった長門とぶつかった。 おいおいどうした長門? と聞こうと思っていたら、長門は古泉のほうこうを向き、 「あなたの服を借りたい」 と、古泉に向かって言った。 長門が、古泉に何か言うなんて珍しい。 ってか、なぜに古泉の服? なぜだろう? よく女の子の一人暮らしであるのが、部屋に男物の服をぶらさげて、同棲している男がいると誰かに思わせるというのがありきたりだが。 それなら、なぜ古泉?俺でもいいだろ。 いや、確かに古泉のほうがオシャレをしているような印象は受けるが・・・ って、長門にかぎってそんなことはないか。 で、長門がそんなことを言ってしまったせいで、俺たちは今、古泉の家にいる。 家には誰もいない。 こいつも一人暮らしなのか、それともただたんに親は外出中なのか。 それも、俺にとっちゃあどれでもいい。 そして、長門は古泉がだしてきた服の中からカジュアルなもの選びだし、それから俺のほうを見る。 「あなたには明日、これを着てもらう」 おいおい、古泉の服なんて着たくねーよ。 「大丈夫、情報操作は得意。あなたの身長は高くする」 そっちかよ! ってか、何で俺にそんなことを・・・ と言おうとしてやめた。 「ジョンになれとでも言うのか?」 「そう」 ・・・・・ 「俺が、ジョンになってどうするんだ?」 「それからはあなた次第」 古泉の顔は、最初ハテナという感じだったのだが、だんだん状況が理解できてきたという感じの表情になる。 ったく、今の話だけで状況が分かるってのに、なぜチェスの先読みができないんだろうね? 「どうする?」 長門が聞いてくる。 そんな、急に言われてもな・・・ よさそうな台詞なら、古泉に頼んだら嫌と言うほど教えてくれるだろうが・・・ でもまあ、 「やってみる」 っていうのもいいかもしれないな。 次の日の午後8時。 俺は長門の家に来た。 そこには、古泉もいる。 まずは、古泉の服に着替えだ。 すこし袖が長いのがどこかシャクに触る。 「準備はいい?」 ちょっと待ってくれ。服装はともかく、心の準備はまだだ。 それから、一度俺は深呼吸し、古泉が書いた台本を心の中で読み。 こんなうまくいくはずがないだろ!と思いながら、 「いいぞ」 長門にそう言った。 とたん、長門はいつもの高速呪文を唱え、俺は一瞬頭がクラッとした。 まあ、あの時間遡行と比べればマシだけどな。 「完了した」 どうやらもう終わったようだ。 確かに、袖の長さはぴったしになっている。 「ありがとう」 おっと!声も変わってるじゃないか! 一応、鏡で顔も確認。 ああ、こりゃ別人・・・だけれどまあ、少しは俺に似てるな。 少しかっこよくなってるような気もする。 「それが、涼宮ハルヒが現在イメージしているジョン・スミス」 そうか。ハルヒはこんなふうにイメージしてるのか。 ところで、実は言うと先ほど、ハルヒの家のポストに、 『今日の午後9時半頃、東中校門まで来てくれ』 という紙を機関の人間が置いておいたようだ。 ちなみにこれを書いたのは俺ではなく、20代前半の機関に所属している人間だ。 どこの誰かは知らんが、一応感謝しておこう。 ところで、あんな手紙でハルヒがちゃんと来てくれるのかどうかが不安だ。 だいたい、ジョン・スミスがハルヒの家を知ってるわけがないだろ! 俺さえ、どこにあるか知らねーよ。 というわけで、俺は東中に行くことにした。 時間は9時ごろ。 まあ、9時半まで後30分もあるんだから、まだ来てないだろう・・・ と思っていたのだが、ハルヒはもう来ていた。 いつぞやの七夕のときと同じように、Tシャツに短パンなラフな格好。 これは間違いなく、意識しているような気がする。 どうせなら、俺も古泉の制服を借りて着たらよかったかもしれん。 ハルヒと目が合った。 「ジョン?」 ハルヒが訊ねてくる。 「ああ、久しぶりだな」 どこからか吹いたか知らんが、風が俺とハルヒの間を駆け抜ける。 「どうして?」 何がだ? 「どうしてまた、あたしに会おうとしたの?」 確か、この質問をされたときになんと答えればいいか先ほどの古泉の紙に書いてあったはずだ。 なんだった? そうだ、確か、 「お前の話を、後輩から聞いたんだよ。黄色いカチューシャをつけた女が高校で暴れてるってな」 「そんなことはどうでもいいのよ!」 どっちだよ・・・ 「何で今頃になってあたしの前に現れたか聞きたいの。1年前でも2年前でもなくて」 やばい、この回答は持ち合わせていないぞ・・・ 「だから、その、お前の話を聞いたのがつい最近で・・・」 「あたしはあんたに会いたかった!」 ハルヒは叫ぶように言う。 それから、いつぞやのようにハルヒは校門によじ登って、中に入っていった。 「あんたも早く来なさいよ」 ったく、ハルヒらしいぜ。 そして、グラウンドの真ん中で俺とハルヒは突っ立った。 「あんたに話したいことがたくさんあるのよ」 空を見上げながらハルヒが言う。 やっぱ、この季節はほとんど星が見えねーな。 「何だよ?」 「あたしね、北校に入って部活作ったの・・・それから・・・」 それから、ハルヒは延々と話し出した。 ほとんどが俺の知ってる話だ。 俺は、それをずっと黙って聞いていた。 悪いが、俺自身が懐かしさに浸ってしまう。 この話を初めて聞いたような素振りを俺はできそうにない。 「それでね、キョンっていうヤツがいて、そいつの雰囲気がどこかジョンと似ていて・・・」 それから何分ぐらいたったかな? 10分はたっていると思う。 やっと、ハルヒは喋り終えた。 そして俺はというと、 「そうか」 これしかいえなかった。 情けない・・・ 「あんたは?何か話したいことがあって呼んだんじゃないの?」 まあな、何も話すことがなくて呼び出したなんて不自然すぎる。 えっと・・・確か・・・ そうだそうだ、古泉に言われたことは。 「お前と前に会ったとき、北校にお前みたいなやついるって言ったこと覚えてるか?」 「ええ、覚えてるわ」 「実はな、俺そいつと付き合ってたんだが、こないだ振られちゃったんだよ」 一瞬、空気が凍りついたような気がしたが、気にせず話を続ける。 「ちょうどジョン・スミスっていう役名が出てる映画の後振られたんで、あの七夕のことを思い出してな」 話を続ける。 「それでだな、ある程度のことは後輩から聞いてたから、それでお前に会おうと」 しばし沈黙。 「あたしに何を言いたいの?」 いつもより小さい声でハルヒが訊ねる。 「いや、だからそいつと似ているお前なら、何かよりを戻すいい案が思いつくんじゃないかと思ってな」 「分かるわけないじゃない!」 だよな・・・普通に考えてそうだよな。 くそ、何を言ってるんだ俺は、ってか古泉は、バカか。 「バカ!」 ハルヒに直接言われた。 「バカバカバカ」 そう連呼するな。 と思っていたら、ハルヒが俺の胸にもたれかかった。 「バカ」 いつまで言ってるんだよ・・・ と思ったその時、何か冷たい感触が俺の腕に感じた。 泣いてるのか?こいつ。 ここからはハルヒの頭しか見えないから、どっちなのかは分からん。 ただ、シャンプーのにおいがするのだけは分かった。 おいおい、後で外出するって分かってたのに、風呂入ってから来たのかよ。 とか思っていると、ハルヒがなにか呟いた。 「あたしじゃダメなの?」 俺にはそう聞こえた。 そして、ハルヒはゆっくりと顔をあげ、 「あたしじゃダメなの?」 もう一度言った。 ハルヒの顔が近い。 泣いているのかどうか、 はっきり言って暗いからよく分からん。 にしてもなんだろう?このデジャヴは。 そうだ。あの閉鎖空間のときだ。 あの時も、こんな暗闇で運動場に二人きりだったか。 「あたしはずっとあんたを探してた。あの七夕の後、北校に潜入してまであんたを探した、それぐらいあたしはジョンのことが好きなの!」 ジョンは・・・告白されたんだな・・・ ったく、幸せ者だ。うらやましいぜ。 俺は、ハルヒの頬に手をやった。 やっぱり泣いているようだ。 「ずっと、ジョンのことが忘れられずにいた」 ゆっくりとハルヒの顔が近づいてくる。 俺も一瞬目を閉じ、 それから、ハルヒの行動を拒否した。 ハルヒの肩を押す。 「俺とお前は付き合ってはいけないんだ」 「何で?もしかして年齢のこと気にしてるの?そんなの離れていたとしても5歳ぐらいでしょ」 「違うんだよ」 ここから言う言葉は古泉に渡された台本に載ってない言葉だ。 今分かったが、あいつはあてにならん。 俺が今そう決めた。 だが、俺が次にやる行動が正しいのかどうかも分からん。 「俺はこの世に存在しないんだよ!」 ハルヒは近くにいるというのに、俺は50メートル先でも聞こえそうな声で叫んだ。 「どういう意味?」 ハルヒの疑問形。 「さっき俺が言ったことは全部嘘だ」 「何で嘘なんか言うのよ?」 「いいから、俺の話を聞いてくれ」 さて、どうする俺。 どうしようか・・・ジョン=キョンと言うのか。 いや、ダメだ。それじゃあダメなんだ。 「実はな、あの七夕の日の後、交通事故で俺、死んだんだよ」 ハルヒの表情が変わっていく。 「まあ、今の俺は幽霊ってわけだ。いや、でも幽霊っていうのは形がないんでな。この体の人物に乗り移ったんだよ。俺に似てるけど、背が高くてちょっとかっこいいしな」 一呼吸。 「だから、俺はお前と付き合うことができない」 そういいながら、俺は一歩後ろに下がった。 「だから、俺の外見と、俺に対する気もちは忘れてくれ」 もう一歩後ろに下がる俺。ハルヒはずっと俺の顔を凝視している。 「そろそろお別れの時間だ」 それっぽく言ってみた。 今から俺が行くところは天国でも地獄でもなく、長門の家だけどな。 俺はハルヒから離れ、校門に向かって走りだした。 と、俺が20メートル走ったところで、 「最後に一つだけ聞かせて!」 ハルヒは叫ぶように言った。 「あんた名前なんて言うの?」 俺はハルヒのほうに振り向いた。 別に、人差し指を唇に当てて、「禁則事項です」なんて言うつもりはこれっぽっちもない。 「ジョン・スミスだ!」 まあ、意味は似たようなもんかもしれねーけどな。 だけど、心に響くものは大きく違うぜ。 「この名前だけは忘れないでくれよ!また、別の人間に乗り移ってお前の前に現れるかもしれねーからさ!」 「忘れないから!死んでも忘れないから!」 「今度お前にジョン・スミスとしてお前にあったときは、宇宙人や未来人や超能力者を紹介してやるよ!」 「楽しみにしてるわ!」 「姿形が違っても、お前のことを見てるからな!」 それから俺は走り出した。 これで、よかったんだろうか? 空を見上げ、一つだけ光っている星にむかって、 「世界を大いに盛り上げるためのジョン・スミスをよろしく!」 そう言った。 次の日の朝、扉を開けるとハルヒはいつものように空を見上げていた。 どこか悲しげなのは気のせいではないだろう。 「よっ!」 軽い挨拶をしておく。 鞄を置き、ハルヒのほうを見る。ハルヒもこちらをむく。 「あたしね、恋愛感情っていうのは精神病の一種だと思ってるの」 急にハルヒがそんなことを言い出した。前にもそんなこと言ってたな。 まあ、そう思いたきゃ思えばいいじゃないか。 宇宙人や未来人がいると思われるよりよっぽどかマシだろうしな。 「でもね、その病を治すには一つ方法があると思ってる」 おっ!そんなところまで考えていたのか。 聞いといてやろう。 どうせ、恋愛感情なんて忘れるとかだろ。 「それはね、恋愛感情をむけている相手と結ばれることよ」 ・・・・・・ 予想外に反してマジメな意見が返ってきたから、俺はしょうしょう驚きを隠せないでいる。 さて、ここで俺はどうするべきだろうか? と、考えてると、ハルヒが言葉を続けた。 「だから、あんたの病を治せるのはあたししかいないわけ」 おいおい、その話はなかったことにするんじゃなかったのか? 俺もそのつもりで接していこうと思ったのだが・・・ ってか、それはどういう意味だ? やっぱり、告白にたいしてOKと言ってると思っていいのか? 「バカ。そんな簡単に了承するわけがないでしょ。そうね、もっとあたしにふさわしい男になるといいわ。そうね、宇宙人や未来人を見つけてきたらいいわよ」 もう見つけてるんだがな。 ん?それより今の言葉の意味ってあきらめるなってことか? 「まさかあたしをあきらめたつもりじゃないでしょうね?別にあたしはそれでもいいけどね。勘違いしないでよ、別にあんたが好きなわけじゃないんだから」 それからハルヒは空を見上げた。 「ねえキョン」 「何だ?」 「あんたが幽霊に乗り移られたらすぐに言いなさいよ」 俺はハルヒと同じ方向を見る。 青いな。どこまでも続く青さがそこに広がっている。 「その時は宇宙人や未来人や超能力者を紹介してやる」
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ハルヒニート最終章 「ただいま」 俺は仕事疲れの体を引きずって帰宅し、我が家の玄関を開けた。奥からエプロン姿のハルヒが顔を出した。 「おかえりキョン。ご飯できてるけど先に食べる? それともお風呂にする?」 家の中からはおいしそうな夕食の香りが漂ってきた。俺は風呂より先に食事にすることにした。 食卓の上には見た目にも美味そうな塩鮭や味噌汁などの和風メニューが並べられた。もちろん全てハルヒの手作りだ。その食事が4人分配膳されたところで、ハルヒが子供たちに声を掛けた。 「晩御飯できたわよ! パパも帰ってきたから一緒に食べなさい」 それを聞いて「は~い」という返事が二人分帰ってきて、子供二人がとたとたと足音を鳴らしながら食卓に着いていった。 「ほら食事の前はちゃんと手を合わせて、いただきますって言うのよ」 「「いっただっきまーっす!」」 子供たちは元気に答えた。 ハルヒの薬指には俺が送った結婚指輪、もうハルヒの姓は涼宮ではなくなっていた。 幸せを絵に描いたような光景を眺めながら、俺は…………。 「ちょっといつまで寝てんのよキョン? 会社に遅刻するわよ!」 俺は目を覚ました。ハルヒの声で。そう、全ては夢だった。なんて夢見ちまってるんだ俺……。疲れてんのか俺……? 「寝ぼけてないでさっさと起きて朝ごはん作ってよ! お腹空いちゃったあたし」 ハルヒはそう言って、再び台所へと引っ込んで行った。 妙な夢を見たせいで寝起きも悪い。一体なんだって俺とハルヒが結婚して、しかも二人の子宝に恵まれて暮らしてる夢なんて見たんだ俺は? フロイト先生も爆笑もんだ。 ハルヒは相も変わらず俺と同じアパートの部屋で生活している、食事代など生活費は俺に一切まかせっきりにしてだ。今のハルヒはいわゆるパラサイトとかニートと呼ばれる部類に属する生活を送っているのだった。 そして断っておくが俺とハルヒは結婚なんてしてないし、まして未だかつてそうしなければならなくなるような既成事実に繋がる行為をしたことも一度としてない、誓って言う。 俺はただハルヒが今のニート生活から脱却し、一人前の社会人になるまでの間こうして食事と生活する場所を一時的に提供しているだけだ。 「朝飯、何がいい?」 「ベーコンエッグ、あとサラダも付けて」 やれやれ、言葉だけ聞いてりゃ同棲相手の台詞にゃ聞こえんな。これじゃ少し大きめの子供と二人で暮らす父親といったところだ。 だがその子供にも最近少し様子に変化が伺えるようになった。 まず今だって、俺がフライパンで卵とベーコンの炒め物を作っている間に、ハルヒがそれを盛り付ける皿を自分から台所に出してくれている。 そんなの手が空いてれば誰だって当然することだが、少し前のハルヒからは考えられない行動だ。それにこれまた言われても無いのに、机の上を拭いて二人分の食パンをオーブンに入れてと、積極的に朝食作りを手伝ってくれていた。 そして食事の後はハルヒが俺と自分の食べた分の皿を流しで洗っていた。といってもこれは日替わりの当番制で、明日は俺がやることになっているんだがな。 一日中家にいる女と、日中働きに出ている男が家事を共有して、しかもどうしてそれを半分ずつというおかしな比率で配分されるのかと文句を言うのは、以前まではその家事すら俺が全部一人でやっていたことを知らない人間の考えだろう。 ハルヒは変わった。未だにニート状態からの脱却はかないそうにないが、家では掃除も洗濯も俺と共有してこなすようになったし、たまにだが食事も作ってくれるようになった。 そうなるために俺が努力した点もたくさんあるが、やはり何よりもハルヒ本人の気持ちがあったからこそここまでやってこれたのだと思う。 「ごちそうさん。それじゃハルヒ、行ってくるから」 「うん。いってらっしゃい、今日の帰りまた遅くなるの?」 「多分な。早くて6時過ぎ、遅けりゃ10時過ぎるだろうから、その時は電話するよ、晩飯は先に食べといてくれ」 「ううん。遅くなっても別にいいわ。キョンが帰ってくるまで待ってるから」 そりゃ自分で飯作るのが面倒だからか? とは聞かずに俺は家を出た。 風向きは変わってきている、それも確実によい方向に。 ハルヒは最近、以前と同じ活発さを取り戻してきていた。 ハルヒはあれほどハマっていたネットゲームからもすっかり足を洗った。まだ少しネットの掲示板を覗いたり、サイト巡りをする習慣は抜けていないらしかったが、パソコンの前に座ってるのはせいぜい一日に1・2時間程度ということだ。 この調子なら、本当にハルヒが働きだせるようになるまで心を快復させる日は近いかもしれない。いや、ひょっとしてもうとっくにそうなっているのかもしれない。 もしそうなったら、俺はこのハルヒとの奇妙な同棲生活を終えることができ、ハルヒも実家に帰ってまた元気に過ごすことになって、全て元通りのめでたしめでたしとなるわけだ。 俺はそれを望んでいたはずだ。恐らくハルヒにとってもそれが理想の形であるはずだ。 だが別に俺は今の生活になにか不満があるわけじゃない。 極論、今朝夢で見たような光景が将来にあったとしても文句を言いたい気分にはならない。 しかし冷静になって考えてみろ。ハルヒにだって選ぶ権利がある。あれほどの器量よしなら、きっとどんな男でも捕まるだろう。だったら、俺が無理にハルヒを引き止めることがあいつのためになるとは思えない。 「…………そりゃあな。元々吊り合わない仲だとは思ってたさ」 少なくとも俺がハルヒの立場なら、こんなさえない男に惚れたりしないと思う。だからハルヒも今は無頓着だが、あいつのためを思うなら今のうちにあいつを元の生活に戻してやって、早く社会復帰していい男と一緒になれるようにしてやるのが最善策なのさ。 やれやれ、俺にとってハルヒってのは何者なんだろうな? まるで年の離れていない子供を持っているような気持ちだ。気づけば俺はあいつの将来だのなんだのについて考えてる。 「え? 今日はもう帰っていいんですか?」 「ああ。取引先から急なキャンセルがあってね。今日予定してた仕事は全部無しになった。だからキョンくんもまだ早いけど帰っていいよ」 呼び出された上司からそう言われて、俺は一礼してからその場を後にした。 ちなみになぜ俺が職場でもキョンと呼ばれているかというと、同期入社してきた奴の中に俺と同じ名字の奴がいたため、区別するために俺の方があだ名で呼ばれることになったのだった。これで定年まで俺の本名を呼んでもらえる機会が無くなったわけだ。 「まあ、せっかくの半ドンだ。昼飯買って帰るか」 家では今頃ハルヒが一人で昼食の仕度を始めている頃だろうか。俺が会社を後にして、電車に乗って帰ってアパートに着いたときには、昼のお茶の間定番ソング「お昼休みはウキウキウォッチング」が流れている時間だった。 「ただいま、今日は早く帰れたから…………ってあれ?」 家の中には妙な景色があった。ハルヒがいるのは問題ないが、もう二人知らない人間が追加されていた。 「おかえりキョン、これあたしの両親、なんかあたしが心配で来たんだって……」 ハルヒがそう紹介した。 「あなたがキョンくんですか。娘が世話になっています」 母親のほうがぺこりと頭を下げた。俺もつられるようにお辞儀を返した。 「キョン。あんたが連絡してたんですってね、母さんたちに、あたしがここにいるってことを」 ハルヒはぶすっとして口をアヒル形にしながら言った。 そうだ、俺が連絡していた。ハルヒをこっちに連れてきた翌日に。つまりずっともう前の話になる。 そりゃあいくら家出人とは言え、黙って家に連れ帰って住ませてますとはいかないだろう、常識的に考えて。 俺はハルヒの両親に、ハルヒを預かっている旨、それについて本人の同意も得た旨、そしてしばらくしたら元のハルヒに戻ると思うから、それまで任せてみてくださいとの説明をしたのだった。 もちろん連絡先と住所も伝えていた。だがこのハルヒの両親は今更になってなぜいきなり尋ねて来たりしたのだろうか? 「うちのハルヒが随分世話になったようでしたな、キョンくん?」 ハルヒの父親が威厳に満ちた声でそう尋ねた。 「世話だなんてそんな……。別に迷惑だなんて思ってませんし……」 つい気おされるようになって、頭をかきながら俺は答えた。その様子をみてハルヒがふんと鼻を鳴らした。 「それで父さん、一体なんの用事よ? 会いに来ただけ? それならもういいでしょ、とっとと帰ってよ」 ハルヒはぶっきら棒にそう言ってのけた。俺は今までハルヒの家庭事情について詳しく知らなかったが、どうやらこの様子からすると、少なくともハルヒと両親との仲はそんなに良好なものではないらしい。 「ハルヒ、お前もいつまでも彼に面倒を見てもらっているわけにはいかんだろう。はっきり言おう、父さんたちは今日ハルヒを連れ戻すつもりでここに来た」 ハルヒの父親がそう言った。ハルヒはそう来るのはわかっていたとばかりに肩をすくめてため息をついた。 「はあ、やっぱりちっとも変わらないのね父さん。それと母さんも。いつもあたしにそうやって一方的に意見を押し付けるんだから」 「もうハルヒ! そんなこと言ってもあんたは滅多に母さんたちの言うことなんて聞かなかったじゃない! 高校選ぶ時だって、母さんたちが進めた私立の名門高校を受けずに何でもない公立高校に無理やり進学したのを忘れたの?」 「別にいいでしょ? あたしの事なんだからあたしが決めただけよ! 言っとくけど家になんて絶対戻らないわよ!」 ハルヒはぷいっと唇を尖らせて横を向いた。こうなったハルヒはもう誰の話も聞かない。俺でさえわかるんだから、このハルヒの両親も当然に理解しているだろう。 「……キョンくん」 「は、はい。なんでしょうか?」 というかこの人たちも俺をキョンと呼ぶのかよ。まあハルヒがそう教えたのだろうが。 「キミはハルヒの事をどう思っているんだね?」 「え? ど、どうって言われても…………」 「単刀直入に言おう、君はハルヒと結婚を前提として今の付き合いをしているのか?」 …………は? いきなり何を言っておられるのだこのハルヒパパは? 俺がハルヒと結婚する? なぜハルヒについての話が急に三段ワープ並みに飛躍して俺との結婚話にまで進展しているんだ? 「キミも常識ある大人なら、今のハルヒとの暮らしについておかしいと思うだろう? 一つ屋根の下で年若い男女が他人同士一緒に暮らしているなど……」 そりゃあ正論だと思う。俺とハルヒの生活は傍から見たら立派な夫婦生活と映るだろう。 「そうなったら社会的にはもう二人が一生を共にする気があるのか無いのかという疑問が出るのも当然だと思うだろう?」 「父さん! ちょっといい加減に……」 「ハルヒは黙っていろ! 私は今彼と話をしているんだ! キョンくん、だから君の考えを聞かせてもらいたい。もう君はハルヒと一生責任を持って共に暮らしていくつもりなのか、それともそうでないのかを」 「そんな急に言われても……。それにもしそうじゃないと言ったら、ハルヒを連れ帰ってどうする気なんです? ハルヒは知っての通り心の病を持っていて、とても一人で生きていける状態じゃあ…………」 「その事についてはもう心配いらない。知り合いの医者から紹介された派遣カウンセラーと話が通っている。ハルヒがうちに帰っても君の代わりはその人がする」 俺の代わりだって? そんな。俺がハルヒと一緒に暮らしてたのはそんな仕事みたいな関係じゃなくて………… 「キョンくん。誤解してもらっては困るからはっきり言おう。私は君にとても感謝している。この通りだ」 ハルヒパパは座ったまましかし深く頭を下げた。 「この家に来てハルヒを見て正直驚いたよ、以前家を出て行ったときとは比べ物にならないほど落ち着いてくれている。多分全て君のおかげなのだろう、本当にありがとう」 そうだ。ハルヒは前よりずっとまともになっている。もう自堕落に一日中パソコンと引っ付いて生活することもないし、部屋だって自分で掃除している。気の向いたときには俺に弁当を作ってくれることすらある程だ。 だったら…………ひょっとしてもうこの父親の言う通りにすべきではないだろうか? だってハルヒは誰から見てもほとんどまっとうな社会生活を営める能力を持っている。それが誰の手柄かなんて問題じゃない。ハルヒが戻れるなら、早く元の生活に戻してやるべきなんじゃないのか? そう、こんな不自然な関係はさっさと止めにして。 「ハルヒの仕事先についても大手の総合商社と話が付いている。ハルヒの一流大学の肩書きは中退とはいえ十分に買ってもらえたよ」 普通ここまでしてくれる両親ってのは中々いないと思う。ハルヒの両親も、紛れも無くハルヒを愛しているんだ。それは違いない。 でも、ハルヒは気にいらない表情でぶすっと顔をしかめていた。そして俺も内心同じ気持ちになるところがあった。それがなぜなのかはわからない。 「それでねハルヒ。あんたももう25でしょう? もういい相手を見つけて家庭を築いていく年よ、だからその会社で働きながら男の人と仲良くなって…………」 「イヤよっ!!」 ばあん、ハルヒが机をぶっ叩いて立ち上がり反論した。これには俺もハルヒの両親も驚いた。 「母さんも父さんも! いっつもそう!! あたしの事なのに全部そうやって勝手に決めて!」 「お、落ち着けよハルヒ!! 両親だってお前の事を思えばのことじゃないか!? ありがたい話じゃないかよここまでしてもらって! 感謝こそすれ文句をいう筋合いは無いだろ!」 俺がそうなだめると、ハルヒは荒い息を吐きながらもすっと椅子に腰を下ろした。 「……まあそういうことだキョンくん。それでさっきの質問の続きだ。君はハルヒをどう思っているんだ?」 ハルヒパパが落ち着いた、しかし低い声でそう尋ねた。 俺にとってハルヒがどういう存在なのか? それは…………ずっと前にも同じことを考えた。そして今も答えは同じだ。 俺はハルヒが好きだ。 この奇妙な同棲生活にも、言い得ないほどの満足感と幸せを感じていた。 だからハルヒと結婚を前提に付き合う気があるのかと聞かれれば。「はい」と答えることになる。 だが、だったらハルヒはどうなる? 今俺が一緒にいたいと言えば、ハルヒはこの場の勢いで同意するかもしれない。しかしそれが本当にハルヒのためになるのか? 今の生活を引きずってハルヒが婚期を逃すことを両親が一番恐れているのはわかる。そしてそうなったとき、俺は責任を取れるのか? そんなの取れるわけがない。親からすれば自分の娘の一生に関わる問題、必死になるのも頷ける。 ハルヒの両親はすでにハルヒのために家に医者やカウンセラーを準備させるとまで言っている。おまけに就職口も、いい結婚相手を探す方法まで用意してくれている。 今のハルヒは確かに以前のハルヒに戻ったが、それでもまだ高校生と同じくらいの精神年齢にしか見えない。そんなハルヒに今この場で無理やり俺を選ばせて、ハルヒが本当に幸せになれるのか? この両親だって口には出さねど内心は反対している、それは雰囲気で十分伝わってくる。そりゃあ当然だろう、ハルヒならもっと金持ちのいい男をいくらでも捕まえられる。可愛い娘を俺なんかにさらわれたくないと思っているだろう。 俺はハルヒが好きだ。だがそれ以上にハルヒ自身に幸せになってほしい。だったら、ここでの返事はもう決まっている。 「…………わかりました。もう俺がハルヒにしてやれることはありません。ハルヒをよろしくお願いします」 俺は手放した。いつでも手の届くところにあった俺の一番の幸せ、ハルヒとの生活を。 それ以上誰も何も言わなかった。 ただその時のハルヒが顔に浮かべた表情はひどくがっかりしたもののように見えた。ハルヒが一体誰に何を伝えたかったのかはわからなかった。 そしてその後の手続きはひどく事務的なものだった。 まずハルヒパパは、ここでハルヒが世話になった分の金銭を養育費として支払うと言ってくれた。 手渡された小切手に記された金額は、とても一人の人間が一年足らずの生活で必要とする金額ではなかったが、多い分は気持ちとして受け取ってほしいということだった。 それから、ハルヒはそのまま両親と共に家を後にした。これといった私物を持っていなかったハルヒは、ここに来たときと同様に手ぶらで着の身着のまま帰っていった。 あれほど怒り狂うように抵抗していたハルヒはなぜか帰るときはこの上なく大人しかった。 ぱたんと玄関の扉が閉じてからは静かだった。久しぶりに一人になった広い部屋で、俺は一人分の昼食を作って食べた。 それからまた元の生活に戻った。気楽で気ままな独身男性の生活ってやつだ。 仕事は忙しかったがそれが逆にありがたくもあった。早くハルヒの事を忘れちまいたかった。忘れないと俺自身がいつまでも前に進めないと思ったから。 部屋を模様替えして大掃除した。部屋にあったハルヒのために買って来た雑誌やらなんやらは全て捨てた。 クローゼットの中には一つだけ掛けられた女性物の服があった。以前まだハルヒが全くひきこもり状態から回復していなかったときに通販で一緒に選んで買ったものだ。家に送ってやろうかとも思ったがやっぱりそれも捨てた。 ハルヒだってさっさと俺の事を忘れるべきだと思ったから。俺の事も、ここでの生活も全て忘れて、ハルヒママの言う通りいい男でも見つけて幸せな家庭を築いていくべきなんだ。 1ヵ月経った。もうあまりハルヒの事を考えなくなった頃、夕方帰宅した時に一本の電話が掛かってきた。 せっかく家に帰ってまた会社から仕事の話じゃないだろうな。そんなことを考えながら俺は受話器を取って耳に当てた。 電話を掛けてきたの相手は会社の上司ではなく、ハルヒの母親だった。 ひどく狼狽している様子で、ハルヒの母親は恐ろしさから来る震えを堪えるのと同時に、嗚咽を漏らしながらむせび泣いていた。 なにがあったんですか? そう聞くと、ハルヒの母親はなんとか一言を搾り出すために呼吸を整えて、短く俺に告げた。 『ハルヒが自殺した』 後編に続く